最強ツンデレの敗北
ネ.願ってもいいのなら
私の退院は早かった。
それからの日々は、自来也様を待つナルトと過ごしたり、シズネさんに基本的な医療忍術を教わったり、スイさんやリクさんに修業をつけてもらったりと非常に充実した毎日を送っていた。
しかし、
サスケの里抜けで、ナルトは見ていられないくらい落ち込んで。
結局。
そんなナルトに、私は何もしてあげられなかった。
ナルトは、私には何も語らず。
サクラの前で笑顔を作り、サスケを連れ戻すと誓った。
私には踏み入れることのできない絆だった。
「ナルトは、自来也様が戻って来次第、発つのだろう?」
「‥そうみたい」
「やはり、寂しいのか?」
「寂しい‥のかもね。
でも、ナルトが旅に出るからじゃないのよ」
ネジの病室で、林檎を剥きながら、思う。
ナルトの病室に私が顔を出さなくなって何日目だろうか。
きっとサクラが私の代わりにこうして林檎を剥いているだろう。
「サクラに妬いているのか?
そんなんなら、ここにいないで‥」
「はは、それはほんのちょっとだけ、ね。
違うのよ、サクラじゃないの」
「なら、なんだ?
何が寂しい?」
何が?
私は、言葉を探す。
「ナルトの、想いの強さ、かな」
「サスケとサクラに対する?」
「サスケとサクラ。カカシ先生。三代目に綱手様。シカマル達同期の仲間。木の葉の里。
ナルトの想いは強い。すごく、強いの」
「‥ああ」
「私は、時々、寂しくなる」
「‥‥‥‥‥」
「ナルトは大きい。
‥私は‥なんて小さいんだろうって思い知る」
「‥‥‥そんなことはない。
お前がとても小さいのなら、俺は目にも見えない存在だろう」
「まさか」
「うずまきナルトは不思議な奴だ。
こんな俺に、光を見せてくれた。お前の心もあっという間に掴んで、俺や皆がお前に伝えたかったこともいとも簡単に言葉にしてしまう」
「そうね‥」
「まだ認めたくはないが、お前がナルトを想うのも仕方がないと思う。だが‥」
「だが?」
「あいつに、お前をそんな風に思い悩ませる権利はない」
「‥‥何それ?」
思わず、笑ってしまった。
どんな理屈よ?
「うずまきナルトは、お前の想いに応えたのだろう?
その責任がある。背負えないようなら俺は黙っていない。‥と言っておいた」
「は?いつ!?」
「いつだろうな」
「もう、本当にネジはおばあちゃんより過保護だわ」
「当たり前だろう」
「開き直るし」
はい、と林檎の皿をネジに渡す。
ネジはお礼を言って私を促した。
私は、小さな溜息を残して、
行ってきます、と告げる。
「‥ユメ‥?」
「何よ。サクラじゃなくて残念だった?」
「いや‥来ないと‥思ってたから」
「元気、ないのね」
「何言ってんだってばよ!
俺ってばいつも元気元気!
馬鹿言うなよな!」
「いいわよ、べつに。
つまんない空元気より、よっぽどいいわ」
「‥‥‥‥‥」
空元気はサクラのために取っておけばいい。
「‥ネジは大丈夫か?」
「大丈夫。お説教できるくらい、ぴんぴんしてるわ」
「見舞い、毎日行ってんのか?」
「一応ね。チョウジやナルトと違って可愛い女の子がお見舞いに来ないのは可哀相でしょう?」
「‥イノは知らねーけど、‥サクラちゃん、別に毎日来てくれてるわけじゃねーし」
「そうだったの?」
てっきり、私は彼女が毎日来ているものだとばかり思っていた。
「‥なんか、もしかしてちょっと拗ねてる?」
「馬ッ‥んなわけねーし!」
「あ、そ」
そうよね。
私は、今のナルトを元気付けることすら出来そうにないのに。
会いたかったなどと言ってもらえるはずがない。
「‥‥‥‥‥‥‥‥俺、連れ戻すって約束して‥」
「うん」
それから、諦めないって再び誓ったよね。
「連れ戻せなかった。」
「‥うん。
でも、諦めてない」
「ああ。
‥約束だから、諦めない。
だけど、呆れてるかな、サクラちゃん‥」
「どうして?」
「俺には、無理だって」
「‥‥‥‥‥ナルトに出来なかったら、誰に出来るの?
サスケのために、ナルト以外の誰が、そんなに必死になれるの?」
「‥‥‥」
「馬鹿ね。ナルト以上のお節介なんてどこにもいないんだから」
「‥馬鹿馬鹿言うなってばよ。さすがに凹む」
「林檎」
「あ?林檎?」
「林檎、剥いてあげる」
「‥‥おぅ。
剥けんのか?」
「失礼ね。
そのくらい、出来るわよ。
ナルトが、帰って来たら‥」
「ん?」
「‥ナルトが帰って来るまでに、料理、上達しておくから。
ラーメンでもカレーでも、何でも作れるように、なるから」
だから、ちゃんと、
私のところに帰って来て。
待ってる。待ってるから。
「無理すんなよな」
「うん。
ナルトも、ね」
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