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短編
5


シャワーを浴び終えてスタジオから外に出ると、空はもうオレンジ色に染まっていた。

外に出た瞬間アキが何も言わずにすたすたと歩きだすので、慌てて後を追い掛ける。
ちなみに、俺の片頬は赤く腫れ上がっている。さっき調子に乗ってキスしようとしたら、思いっきり殴られてしまった……アキに会ったら絶対一回は殴られるんだよなぁ、俺……。

「アキ…!」
「何だよ。仕事は終わったんだから付いてくんな」

つ、冷たい…さっきまであんなに可愛く啼いていたのに……。

でも、こんなことでめげたりはしない。アキが少しでも俺を認めてくれるように頑張るんだ!

「ね、もう夕方だし…一緒にごはん…」
「ヤダ」

もっとアキと一緒にいたくて夕食に誘ったら、一蹴されてしまった。
がーン!って漫画みたいな効果音が頭の中に鳴り響いた気がする。

(そ、そんなに俺のこと嫌いなんだ……!)

何も言わない俺を不審に思ったのか、振り返ったアキがギョッとした。

「なっ、いや…お前が嫌なんじゃなくて!今日は家で食うの!」

どうやら本気で泣きそうな顔をしていたらしい。周りをチラチラ見ながら必死に弁明し始めるアキ。

取り敢えず嫌われてるわけじゃないみたいでホッとした俺は、アキの言葉を頭の中で反芻した。

(アキの家…確か、一人暮らしだっけ……?)

アキがもそもそと話を続ける。

「この前から友達と遊んだり、合コンとかで外食続きだったから…今日は家であっさりしたモン食おうと思って…」
「………」

友達とか合コンって単語が引っかかったけど、それよりも今は別のことが気になった。

「ご飯って……アキが作るの?」
「あ?そうだよ」

当たり前だろって感じで返される。一人暮らしなんだから当然か。作ってくれる彼女がいるとか言われたら本気で泣く。

それよりも……

「だから、飯はまた今度…」
「食べたい!」
「は?」

踵を返そうとしたアキの手をがっちりとつかんだ。多分俺の目はすごくキラキラしてると思う。

「アキの手料理食べたい!食べたい食べたい!」
「な、何でそうなるんだよ!」

だって、好きな人の作る料理とか食べたいに決まってる。それにアキの家、すごく興味がある。ぜひ行ってみたい。

けど、アキは心底嫌そうな顔をしていた。

「だ、だめ…?」

やっぱいきなり言われても迷惑なだけだよな……。

ずーんって肩を落としたら、アキが鬱陶しそうに手を振り払った。

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