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短編
2


恐る恐る顔を覗き込むと、頭をべしっと叩かれて押し退けられてしまった。
その拍子にアキのナカに入れたままだった自身が抜けて、ベッドに尻餅を着く。

アキはそっぽを向いたまま、こっちを見ようともしない。

激しくしたこと怒ってるのかなぁ……だって、小野村さんが今回のテーマは“無理やり”とか“鬼畜”って言ったから……。


俺、奥野 亮平(オクノ リョウヘイ)はこのOM社でゲイビデオのモデルをやっている。や、本職は声優なんだけど、その……いろいろあって、月に二回くらい今日みたいなアルバイトをしているんだ。

俺の相手役をしていたアキは同じくOM社のモデルで(本人は嫌がっているけど)、まだ二十歳になったばかりの大学生。俺とアキは、いつも一緒に仕事をする。

そして俺は、彼にメロメロだ。
アキは、俺のことなんて何とも思ってないだろうけど…っていうかむしろ嫌われてる気がする……。

「お、お疲れ様…あの、タオル……」

小野村さんや他のスタッフさんが片付けを始める中、怒ってしまったアキにどうして良いか分からずおろおろしていたら、アキと同い年くらいの小柄な男の子が近付いてきた。
アルバイトの真純(マスミ)君だ。事務の方で雑用とかをしているらしいけど、たまにスタジオでもお手伝いもするみたい。

差し出されたバスタオルを受け取って、身体を拭き始めるアキ。

「さんきゅー。あー、ベタベタで最悪。早くシャワー浴びてぇ」
「アキ君、歩ける…?」
「ん、無理。肩貸して?」
「っ、それなら俺が…」

動けなくなったのは俺のせいだから、とシャワー室まで運ぼうとしたら、また頭をべしっと叩かれた。

「お前は来んな」
「えぇっ…!」
「行くぞ真純」
「う、うん…」

身体にバスタオルを巻き付けて、真純君の肩を借りて何とか立ち上がるアキ。そのままゆっくりと歩きだして、ベッドから離れていく。
真純君は気を遣って何回かこっちをチラチラと見るけど、アキは全然見向きもしない。

一人ぽつんと残される素っ裸の俺。

俺、やっぱりアキに嫌われてるのかな……確かにヘタレだし、周りから良く顔だけの男だって言われるけど……。

(けど、アキのこと本気で好きなんだ…!)

ぐっと拳を握り締めて、勢い良く立ち上がる。そしてタオルも巻かずにアキの向かったシャワー室へ駆け出した。

素っ裸で走る俺を見て、スタッフさんがびっくりしたり喜んだりしていたのは気が付かなかった。


***

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あきゅろす。
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