短編
8
でもその願望も虚しく、俺の身体を散々弄っていた手があっさりと離れて、小野村達の気配が遠ざかっていく。
「んっ、んふぅっ!」
慌てて身体を起こそうとしたけど、少し動いただけで感じてしまって、その場に這いつくばることしかできない。
やがて扉の開く音がして、辺りが静まり返った。小野村達だけじゃなくて、カメラで撮影していた人間の気配もない。
何で放っておかれたのか、撮影はどうなったのかとか、俺に分かるわけない。
けど、完全に一人きりにされてしまった。
***
(Side:リョウ)
「本当に、ここで良いのかな……」
とりあえず話を聞くだけ……のつもりでやってきたOM社。でも、やっぱりもう帰りたい……。
声優の仕事を始めてもうすぐ一年。だいぶ慣れて少しずつ仕事が増えてきた時に、何故か舞い込んできたAV男優の依頼。しかもゲイビデオの。
所属している事務所の社長が、OM社の社長さんと知り合いらしい。
確かに俺は女の子だけじゃなくて男もいけるけど、AVなんて絶対に無理だ。ただでさえヘタレで顔だけの男って言われるのに……。
社長の小野村さんっていう人から地下のスタジオに来てってメールが来たけど……上の階より薄暗いし人の気配が全然ない。
(うぅ、帰りたい……)
すると、暗くて狭い通路の奥……薄く開いた扉から僅かに光が漏れていた。あそこが打ち合わせの場所だろうか。
(誰かいるのかな……?)
恐る恐る覗いてみると、
「えっ…!?」
中には信じられない光景が広がっていた。
***
どれくらいの時間が経ったんだろう。いや、実際にはそんなに経ってないのかもしれない。けど、俺には酷く長く感じられた。
「ん、んんっ…ふ、ぅ……!」
じくじくとした身体の疼きは治まるどころか悪化する一方で、両手を後ろ手に拘束されているから熱を解放することはできない。しかもイけないように縛られて、快感を得ると余計に苦しくなる。
イきたいのにイけない、気持ち良くなりたいのにこれ以上気持ち良くなりたくない……熱に犯されて、意識が朦朧としてきた。
目も口も布で覆われているけど、顔は涙と唾液でぐちゃぐちゃだし、身体も自分の放った白濁やローションでドロドロだ。さらにイけない自身からは止まることなく先走りが溢れて、相当酷い格好をしていると思う。
アルバイトを探そうと思って外に出ただけなのに、何でこんなことになったんだろう。
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