短編
4
自分の提案に満足気な小野村に対して、丸川は呆れを通り越して蔑んだ目をしている。
「いたいけな青少年を拉致した挙げ句に強姦ですか。とっくに犯罪者ですけど、そんなに逮捕されたいんですか?バカですか?」
「大丈夫ー、俺はまだ警察のお世話になるつもりはないよー」
俺を無視して軽口を叩き合う二人。俺はモゴモゴと口を動かすことしか出来ない。
「とにかく強姦で決定だからー。俺達でアキ君を襲っちゃおー」
「んんっ!?んぅっ!」
「はぁ、俺もやるんですか」
「もちろんー。他に誰がいるのさー」
「ん゙ーっ!んーっ!」
(こいつらが俺を抱く!?ふざけるなよ!)
何とか拘束から逃れようと必死だった俺は、もう二人の会話は聞こえていなかった。
「じゃあリョウ君はどうするんです?」
「リョウ君なら大丈夫ー。ちゃんと考えてあるからー」
「はぁ、分かりましたよ……」
丸川は諦めたようにため息をついて、ジャケットをその場で脱いだ。次いでネクタイに手をかけするりと外す。
その仕草にギクリとした。
美形のするその行動に女ならドキッとしそうだけど、俺は焦りが増すばかりだ。
「じゃあ始めようかー」
小野村が緊張感のない声で言いながら近付いてくる。
俺の焦りはいつの間にか恐怖に変わっていた。
(やっ、嫌だっ…!)
セックスはしたことあるけど、それはもちろん女の子が相手だ。同性に抱かれるなんて経験したことはもちろん、考えたこともない。
恐い。物凄く。
「んっ、ぅ…!」
自由のきかない身体で後退ってしまう。恐くて全身がガタガタと震え始める。
「あれぇ、どうしたのー?やっぱり抱かれるのは恐いー?」
小野村が不思議そうに顔を覗き込んでくる。
当たり前だ!と睨み付けようとして、ひくりと息を呑んだ。
「いいね、その怯えた表情。めちゃくちゃにしたくなる」
さっきまでのへらへらとした口調とは違う、低い声。楽しそうに細められた目。まるで別人だった。
「っ…!」
竦んでしまった身体を丸川が押さえ付ける。こっちは俺に同情の目を向けていて……けど、その瞳には鋭さが増していた。
どっちも、激しい雄の表情をしていて。
逃げられない、と本能で悟った。
丸川が、外したネクタイで素早く俺の目を覆う。視界が一気に真っ暗になって、さらに恐怖心が増した。
「んんーっ!」
「可愛い顔隠しちゃうのは勿体ないけど我慢してね。楽しみは後にとっておきたいから」
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