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短編
3


というかだんだん人通りの少ない所に来たような……これが追い込み漁ってやつか!(何か違う)

「ッ、あんまりしつこいと、警察に…!」
「えっ、出演してくれるのー?いやー、嬉しいなぁ!」
「うわっ!?」

埒が開かないので意を決して立ち止まった。振り返ると目の前に小野村の姿があって、がっしりと手をつかまれてしまう。いつの間に真後ろに!?

「は、放せよっ…!」
「ほら丸川ー、連れてってあげてー」
「はぁ、仕方ないですね……」
「おい、話を…!」

何とか手を振りほどこうとしていると、小野村の後ろにいた丸川がため息をついて近付いてきた。

「悪く思わないで下さいね」
「へっ、うわぁっ!」

俺の前でしゃがんだかと思うと、あっという間に肩に担ぎ上げられてしまう。そのままどこかに向かってスタスタと歩きだすのでさすがに焦った。

「やめっ、降ろせよっ…!」
「じゃあ行こうかー」

背中をバシバシ叩いても丸川は涼しい顔のままだし、小野村も上機嫌で全く聞く耳持たない。

結局、落ちるのが恐くて暴れることもできず、大人しく連れていかれるしかなかった。


***


「んっ、んんーっ!んむぅっ!」
「えーっと……『堤 秋人(ツツミ アキト)』君かー。じゃあ呼び方は『アキ』君で良いねー」
「む、んぐーっ!」

俺の財布から抜き取ったカードを見て、小野村が笑顔を向けてくる。ふざけるなって言いたいけど、口を布みたいな物で塞がれているからくぐもった声しか出せない。

連れてこられたのは駅前通りから少し離れた、怪しげなオフィス街にある黒塗りの建物。担がれていたから良く分からなかったけど、ここがコイツらの会社らしい。
薄暗い通路を通って運ばれたのは地下にあるスタジオらしき所。中はいろんな機材が置いてあって、中央奥に撮影のセットみたいなモノがある。

で、俺はというと……ごちゃごちゃ物が置いてある床に、両手と両足を縛られた状態で転がされていた。

「……どうするんです、無理やり連れてきて。この様子じゃ撮影どころじゃないと思いますけど」

近くにいた丸川が、俺を見て呆れたように言う。

当たり前だ。誰がゲイビデオなんかに出るかよ。男に抱かれるなんて冗談じゃない。
何とか隙を見つけて……

「そうだねぇ……じゃあ今回のテーマは“強姦”でいこうかー」
「むぐっ…!?」
「それなら今の状況にピッタリだしー、演技しなくてもリアルなモノが撮れそうだしねー」

なっ、何言ってるんだこいつ!?

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