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短編
1


「……ねーねー丸川ぁ」
「社長、忙しいので余計なことで話し掛けないで下さい」
「うちってさぁ、モデルの数少なくないー?」
「……かなり今更のような気がしますけど」
「せっかくイケメン声優のリョウ君が新作に出演してくれることになったのにさぁ、まだ相手役の子を決めかねてるんだー」
「そうですか…ってリョウ君の撮影って今日ですよ。何してんだアンタ」
「だってどの子もイメージと違うっていうかー」
「だってじゃねぇよ。……で、どうするんです?もうすぐリョウ君来てしまいますよ」
「うーん、こうなったら……よし、外にスカウトしに行こうかー」
「え、今からですか?」
「リョウ君にピッタリの可愛い男の子を見つけるんだー」
「はぁ……」
「ほら行くよー丸川ー」
「そして私も?」





「社長…やっぱり俺、ゲイビデオのモデルなんて無理だよ……」
「なーに弱気なこと言ってんのよリョウ!せっかくの美形なのに出演しないなんてもったいないでしょ!」
「だって声優と俳優は全然違うし…素人だし……」
「いつもマイクの前でやってるようにすれば良いの!とにかく行ってきなさい!」
「うぅ……」





***


先日高校を卒業して、この春から大学生になる俺、堤 秋人(ツツミ アキト)は現在アパートで一人暮らしをしている。

今日は、この春休み中にアルバイトを探そうと思って駅前の商店街にやってきた。親に学費と生活費を払ってもらってるから、小遣いくらい自分で稼ぎたい。

晩飯の材料を買うついでに、いろんな店を見て回る。この時期はどこもアルバイトを募集しているから助かるよな。後でネットでも調べてみよっと。

(どうせなら時給の高い所が良いよなぁ。ゲーセンとか、ガソリンスタンドとか……)

とある店に貼ってあったアルバイト募集の紙を眺めながらぼんやりと考える。

その時、

「やぁ、そこの君ー。ちょっと良いかなー?」

背後から間延びした、何とも軽そうな男の声が聞こえた。

俺?と不思議に思いながら振り返る。そこには……二人のイケメンの姿が。

一人はニコニコと笑みを浮かべた、いかにもチャラそうな男前。ネクタイをせずにだらしなく着崩したスーツ姿に、シャツの前を少し開けているのが何かエロい。

もう一人は全く正反対の、真面目そうな美形さん。ノンフレームの眼鏡をかけて、スーツをびしっと着こなしている。

どっちも二十代後半くらいだろうか。それにしても対称的な二人だ。

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