短編
2
玲一に自分から付いていったあの日。
携帯から皆の連絡先を全部消されて、メアドも変更されて、連絡が来ても拒否するように設定されとしまった。
俺が玲一に従わないと、チームを潰すって脅されたから。
けど、結果的に俺は敵対するチームに入って、皆を裏切ったんだ。
もう皆には会えない。会う資格がない。会って軽蔑されて、罵られるのが恐い。
だから、もう二度とそこへは行かないつもりだった。皆からずっと逃げていくつもりだった。
それなのに、今さらどんな顔をして皆に会えって言うんだ。俺達の関係を、完全に壊すつもりなのか。
(どれだけ俺から大切なモノを奪ったら気が済むんだよ……!)
玲一が、愕然として固まってしまった俺の顔を覗き込む。
『……真浩?』
『っ…』
『嫌なら俺が言ってあげても良いよ?真浩は俺のオンナだって』
玲一は本気だ。俺が拒否すれば、無理やり皆の所まで連れて行かれるだろう。
それだけは絶対に嫌だった。
『……い、い…一人で、行く。自分で…言う、から……』
絞りだした声は情けないくらい震えていて。
俺は玲一に従うしかなかった。
重い足を引きずるようにして向かったチームの溜まり場。一週間ぶりに再会した仲間。それも今日で最後だと思うと、忘れようとしていた悲しみに胸が痛んだ。
皆は俺がずっと音信不通だったから、かなり心配していたようだ。
涙が出そうになったけど、それを堪えてチームを辞めることを告げる。声が震えていないか不安だった。
俺の言葉に皆はかなり驚いて、理由を聞かれて咄嗟に本当のことを言ってしまいたくなった。皆に助けを求めたかった。
でも、言うことはできない。この中に玲一の仲間がいるとか、そんなことはもうどうでも良い。ただ皆を危険な目に遭わせたくない。
結局何も言えずに俯いてしまった俺と、ただ呆然とするメンバー。
そこへ、一番会いたくて、一番会いたくなかった人の声が響いた。
『……真浩、本気なのか?』
ずっと後ろの方で黙っていた龍二だった。怒るわけでもなく、責めるわけでもなく、ただ静かに問うてくる。
龍二の顔が見れなかった。だって俺は別のチームに入っただけじゃなくて、他の男に抱かれたんだ。
(俺には、龍二がいるのに……!)
もう龍二に触れることもできない。
耐えきれなくなって、小さく「ごめん」と呟いて逃げるように溜まり場から飛び出した。
***
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