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短編
9


でも俺は喋る気力もなくて、抱き起こされたリョウの身体にぐったりともたれかかっていた。

「ごめんアキ…酷くしすぎた……?」

いつもの表情に戻ったリョウが、申し訳なさそうに言う。さっきまでの冷酷な雰囲気はどこにもない。

「っ、の…ヘタレのくせにっ…!」

一発殴らないと気が済まないけど、あいにく俺はもう指一本も動かせない。泣き過ぎて擦れた声でそう返すのがやっとだ。だからせめて、目の前の男を精一杯睨み付けてやった。


それからリョウに抱き抱えられてシャワー室へ向かった。動けない俺の身体を、リョウは壊れ物を扱うかのように洗って、中に出された精液も丁寧に掻き出していく。

で、現在広めのバスタブに後ろから抱き付かれるようにして浸かっていた。

「ごめんね…アキがあまりにも可愛いから手加減出来なかった」

リョウが、一言も喋らない不機嫌丸出しの俺を、悪さをして叱られた子どもみたいな表情で見てくる。さっきの鬼畜ぶりはどこへいったのやら。

普段は全然頼りなくて、俺が冷たい態度を取るとすぐに泣きそうになるくせに、少しでも優しくすると嬉しそうに擦り寄ってくる。撮影中は、時には甘く、でも激しく、壊されるんじゃないかって思うくらい荒々しく抱かれる。
リョウに見つめられて、その声が耳朶を打つと全身が疼く。もっと激しく、めちゃくちゃにしてほしいと思ってしまう。

認めたくないけど、俺は無意識にリョウに惹かれているのかもしれない。
バイトを辞めないのも、どこかでリョウに会いたいと思っているからかもしれない。

……本人には絶対に言ってやらないけど。

「ご飯まだだよね?一緒に食べに行こう……?」
「……お前の奢りならな」

ぼそっと呟くと、リョウはパッと表情を明るくして嬉しそうに抱き付いてきた。単純な奴……。

やっぱり、悔しいけどコイツのことは嫌いになれない。

しばらくリョウは俺に身体をすり寄せていたけど、不意にその動きが止まった。

「……何だよ」
「アキ…俺また勃ってきちゃった……」
「はぁっ!?」

そ、そう言えば尻に何か硬いモノが当たって……。

「だってアキがすごく可愛いから……」
「なっ…どこがっ…!」
「ね、ヤッても良い?ていうか、もう我慢できない……」
「ざっけんなこのバカっ!」

ヘタレのくせに調子に乗るな!……俺は真っ赤になった顔を誤魔化すように、おもいっきりリョウを殴り飛ばした。


*END*

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