短編
5
「思わず押し倒したくなっちゃうわね!」
「アタシ、男に生まれてたら絶対にアキ君のこと抱いてるわよ!」
「ははははは……」
もう渇いた笑いしか出てこない。というか“男に生まれてたら”っておかしくないですか。
「アキ君、良く似合ってるよ」
一緒に付いてきた丸川さんも褒めてくれるけど、全然嬉しくない……。
「そうそう……はい、コレいつものやつ」
不意に、小さな透明の瓶を手渡された。中にはピンク色の液体が入っている。
受け取って一瞬躊躇った後、一気に飲み干せば口の中に独特の甘みが広がった。
「ん、あま……」
今のはいつも俺が撮影前に飲まされている媚薬。小野村さんは緊張をほぐすためとか言ってるけど、本当は素直になるしエロさが増すかららしい。即効性じゃなくてじわじわと長時間効くタイプだから余念がない。
「じゃあアキ君!たっぷりリョウ君に可愛いがってもらってね!」
「楽しみにしてるから!」
興奮して鼻息の荒い麗香さんと麗奈さんに見送られて、俺は部屋を後にした。
やっぱりもう帰りたい……。
***
撮影場所は地下にあって、小さいながらもちゃんとした設備が整っている。
「アキ君はいつも通り何もしなくて良いからー。全部リョウ君に任せてねー」
執事の格好をした俺の隣には若旦那って感じのリョウがいる。楽なカッターシャツとスラックス、髪を撫で付けただけのシンプルな姿だけど、腹が立つほど格好良い。
ちなみに撮影には台本なんて無ければリハーサルも無し。俺は何も考えずリョウに抱かれれば良いわけだ。
「あ、でも言葉遣いだけは気を付けてねー。絶対に敬語を遣うこと。あと、リョウ君のことは“ご主人様”って呼ぶんだよー」
「ぅ、はぃ……」
普段なら絶対に嫌だって叫んでたけど、今は薬が効き始めて身体が熱いし、頭もぼーっとしているので素直に頷くことしかできない。
現に下着の中の自身は緩く勃ち上がっていて、リョウに支えてもらわないとまともに立っていられなかった。
「アキ、緊張してる?俺がいるから大丈夫だよ」
「っ……」
リョウが安心させるように抱き寄せてくるけど、俺はその僅かな刺激だけでも反応してしまう。
「薬が効いてきたんだ?目がうるうるして可愛い……」
くすりと笑われておでこに軽くキスされた。くそ、俺が抵抗できないからって好き勝手しやがって……。
しかもその声で、耳元で喋んなよ…妙な気分になる……。
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