櫻井家の食卓
2
「……ん?」
伸びをした瞬間、視界の隅に映った見慣れないモノ。そして身体に違和感を感じて己の姿を見る彼。
そのまま固まること1・2・3……
「……うわぁーっ!?」
家中に凄まじい絶叫が響き渡りました。
***
「ただいまー」
お昼前、櫻井家の次男もしくは主婦の文弥が帰ってきました。
休日なのでゆっくりしていけと言う友人に、家事があるからと早めに帰ってきたのでしょう。主婦の鏡ですね。
中に入ると、リビングの方から誰かがドタバタと走る音が聞こえてきました。
「あれ、和兄……?」
今日は夕方まで帰らないって言ってたのに。それとも拓海?……首を傾げながらリビングへ向かうと、ドアが開いて何かが勢い良く飛び出してきました。
「フミヤさんっ!」
「わっ!?」
でもそれは兄弟でも他の家族でもなく、全く知らない人物でした。
(え、が…外国人?いや、ハーフ……?)
サラサラの金髪に整った甘い顔立ち、スラリとした長身とモデルのようなスタイル。女の子なら思わずうっとりとしそうな容姿をしています。
その青年は目をキラキラと輝かせて文弥に抱き付きました。彼の方が背が高く身体が一回りも大きいので、文弥はすっぽりと包まれてしまいます。
「フミヤさんフミヤさんフミヤさんっ!お帰りなさいっ!」
「えっ、えっ?だ、誰…ですか……?」
ぎゅうぎゅうと抱き締めて頬擦りをしてくるイケメンさんに、文弥は軽くパニック状態です。
「誰って…フミヤさん、俺が分からないの?」
きゅうーんと聞こえてきそうなほど悲しそうな顔が目の前に。
「俺だよ!俺、俺!」
(いや、そんなオレオレ詐欺みたいに言われても!)
そこまで言うのなら、と文弥は青年をじっくり見るために顔を上げました。しかし、そこに人間にはあるはずのないモノを見つけて一瞬固まってしまいます。
「え……」
なんと、その青年の頭には犬の耳のようなモノが付いていたのです。それだけではなく、良く見るとお尻にもふさふさの尻尾らしきモノが……。
(そ、そういう趣味の人……!?)
しかしその耳と尻尾は作り物と言うにはやけにリアルで、柔らかそうな上にピクピクと動いています。
(ど、どうなって……というかこの人、誰かに似てるような……)
その時、文弥は青年の首に見覚えのあるモノを見付けました。プレートの付いた真っ赤な首輪です。プレートに書き込まれた文字は……。
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