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櫻井家の食卓
3


「そういえば拓海は?」

店の中をキョロキョロと見回しても、チームの頭である拓海の姿はない。

健は言いにくそうに視線をそらした。

「あー、アイツなら奥の部屋で……その、寝てますけど……」
「こんな時間に?また誰かと遊んでるんだな」
「あ、いや、相手の奴はとっくに帰ったんですけどね……」
「全く……」

拓海の性癖にも困ったもんだ。ちょっと好みの奴がいたら女の子でも男の子でもすぐに手を出すんだから。

「健さん、コイツ誰なんですか?」

そこへ、まだ中学生になったばかりに見える奴が怪訝そうに尋ねてきた。俺の知らない顔だ。新しいメンバーかな?

「ばっかテメェ馴れ馴れしく言ってんじゃねぇよ!この人はなぁ、拓海のお兄さんだぞ!」
「えっ、拓海さんの!?」

健に軽く叩かれた少年はびっくりしたように目を見開いた。

まぁ、全然似てないもんな俺達。しかも拓海の方が歳上に見えるし。はぁ、自分で言ってて何か悲しくなってきた……。

「コイツはつい最近入ったばっかの奴です。おら、挨拶!」
「し、信哉(シンヤ)って言います!はじめまして!」
「あ、文弥です。拓海がお世話になってます」
「いっ、いえそんな!」

笑って手を差し出すと、ちょっと頬を染めておずおずと握ってきた。可愛いなぁ、照れてるのか?
だいたいここは中学生がほとんどなのに俺よりデカい奴がやたら多いんだよな。だから年相応に小さい奴がいると嬉しい。

「あーもう文弥さん、今の顔は反則っすよ!」
「え、何が?」

信哉を軽く手であしらって、健がため息をつく。

「まぁ、そんな所も好きだから良いですけどね」

一人で納得してしまった。何なんだ一体……と思ったら、俺の肩に手を回して引っ付いてくる。健はいつもスキンシップが激しいんだよなぁ。

「それより文弥さん。たまには二人で遊びに行きませんか?」
「え、二人で?良いけど……どこに行くんだ?」
「マジですか!駅前で良いですよー。あの辺は良いトコ(ホテルとか)たくさんありますしー」

そんな近場で良いのかな。まぁ、まだ中学生だし遊ぶ場所なんて限られてるか。

「おい、健…その辺にしておいた方が……」

勝さんが呆れたような、微妙な顔をして口を挟んできた。どうしたんだろう。

「勝さんは黙ってて!今チャンスなんだから!」
「チャンスって?」
「いえ、こっちの話です。あ、ついでにこのことは拓海には内緒で……」

何でだろ?別に良いけど。

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