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櫻井家の食卓
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勝さんは少し長めの茶髪を後ろで無造作に縛った、たれ目がちの目元がセクシーなかなりの男前だ。前に三十前半って言っていたけど、まだ二十代に見える。

俺はぺこりと頭を下げた。

「いつも拓海がお世話になってます。迷惑かけてすみません」
「迷惑なんて、拓海をチームに誘ったのは俺だ。楽しくやらせてもらってるぜ」

勝さんがフッと目を細めて笑う。格好良い…大人だ……。

ここは拓海が総長をしているチーム“Cherry”の溜まり場だ。ちなみに店の名前も同じ。
元々バーを経営していた勝さんの作ったチームで、少し前に総長の地位を拓海に譲った後も、この店を溜まり場として提供してくれているらしい。

昼間はカフェをやっていて、勝さん目当ての女性客が多いこの店も、夜になるとチームのものになる。勝さんは皆の兄貴分みたいなものだ。

「文弥がここへ来るなんて珍しいな」

確かに俺みたいな一般人が不良の集まる場所になんか行かないよなぁ……。

俺だってこの店に出入りするようになったのは一年くらい前からだ。そのきっかけは……まぁ、いろいろとあって(拓海絡みだけど)。

うーん、懐かしい。俺が拓海の兄貴だって分かった後、何故かチームの皆に恐れられたり敬われたりしたんだよなぁ……。
でも同時にすごく仲良くしてくれて、それからはたまに、本当にたまにだけど店に顔を出すようになった。不良なんて怖いだけだと思っていたのに、ここは居心地が良くて落ち着く。
まぁ、拓海も和兄もあんまり良い顔はしないんだけど。

「今日は家に俺一人だったんで、お邪魔しにきました」
「そうか、ゆっくりしていけよ」

勝さんが口元を緩めて薄く笑う。女の子が見るとそれだけで惚れてしまいそうな笑みだ。

「何か食うか?簡単なモンしか作れねーけど」
「はい、ありがとうございます」

勝さんの作る料理はすごく美味しい。料理上手でこの容姿、そりゃ女性客が絶えないわけだ。

待っている間、健と久しぶりにいろんな話をした。最近のこととか、拓海のこととか。
健は拓海と同い年で、チームの副総長をやっている。俺様な性格の拓海に付き合ってくれる良い相棒だ。

そう言えば、初めてここに来た時も最初に話し掛けてきたのは健だったなぁ……。

『うっわマジでタイプなんですけど!ね、お兄さん、俺と付き合わない?』

本気なのか冗談なのか分からない軽い調子は今と全然変わらない。あの後拓海に殴られてたっけ……。

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