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櫻井家の食卓
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『今夜飲み会に行くことになった。晩飯はいらない』

かなり機嫌の悪い和兄から連絡があったのは、俺が晩ご飯の献立を考えている真っ最中。

和兄は性格はともかく見た目は無駄に格好良いから、無理矢理参加させられるんだろうなぁ。帰ってきてからが怖い……。

それにしても、和兄がいないなら晩ご飯どうしようか……父さんと母さんは今日も帰らないし、拓海もいつ帰ってくるか分からないし……あ、拓海と言えば……。

そこでふと思い付く。
保智と多摩のご飯だけ用意して、俺は夜になってから家を出た。

(久しぶりに、皆に会いに行こうっと)


Cherry


夜になるとひっそりとする家の周りとは違って、十数分ほど歩いた所にある駅前の通りは多くの人で賑わっている。
昼間は普通の商店街だけど、この時間帯はほろ酔いサラリーマンに混じって、いかにも不良っぽい中高生がちらほらとうろついていた。

(この辺りって結構物騒なんだよなぁ……)

通りから外れると少し薄暗くなって、居酒屋やバー、良く分からない怪しげな店がいくつもある。路地にはたむろっている不良グループもいて、ちょっと怖い。

たまに声をかけられたりするので早足で通り抜けて、一軒の小さなバーの前にやってきた。落ち着いた雰囲気のお洒落なお店だ。

「こんばんはー」

カランと音を鳴らしてドアを開けると、店の中には頭を派手な色に染めた中学生くらいの奴らが十数人ほどいた。それぞれカウンターやテーブルで楽しそうに騒いでいる。

入ってきた俺を見て、その多くが驚いて目を見開いた。うーん、そんなに凝視されると居心地悪いんですけど……。

思わず苦笑していると、扉の近くにいた奴が慌てたように近付いてきた。

「文弥さん!」
「あ、久しぶり、健(ケン)」

笑いかけると、健は嬉しそうに抱き付いてきた。可愛いなぁ……って言っても頭を金髪に染めて、耳にはピアスが付いているし俺よりも身長高いけどな。俺の方が歳上なのに……悲しい。

「最近来てくれなかったから寂しかったですよ!さっ、どうぞ!」
「ありがとう。じゃあお邪魔します」

健に手を引かれて向かったのは中央にあるカウンター。
途中、周りにいた奴等が挨拶をしてくれるので、こっちも笑顔で返す。

「久しぶり、文弥」
「こんばんは、勝(マサル)さん」

カウンターに着くと、マスターの勝さんが笑顔で迎えてくれた。

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あきゅろす。
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