櫻井家の食卓
8
「ぁっ、ぁぁっ!ふぁぁっ!」
「くっ、……なぁ、兄貴。俺が、本当に抱けるなら誰でも良いと思ってンのか?」
不意に、腰を打ち付けながら、拓海が小さな、擦れた声で呟くように言った。いつもの余裕ぶった表情とは違って、何だか泣き出しそうな、情けない瞳でこっちを見ている。
(な、んで……そんな顔するんだ……?)
こんな表情の拓海、最近見たことあったっけ……?
何か返そうと口を開いたけど、一番感じる所をゴツゴツと叩かれていたらそれもできなくて……。
「ぁ゙ぁぁっ!たくっ、んぁ゙っ!ぁっ、ひぃっ!」
「俺は……まぁ、いいや。どうせ聞こえてねぇだろうし」
「ぁぁ゙っ!たくっ、たくぅっ…!お、ねがっ…イ、かせ……!」
もう頭がおかしくなる。ボロボロと泣きじゃくって拓海の首に腕を回して縋りつくと、頭に手を回されてキスされた。するりと侵入した舌に口内をまさぐられる。やば…気持ち良い……。
「んっ、ふっ…んぅっ、ふぁっ…!」
「……はっ、じゃあ俺も一緒にイかせて……」
唇を離して甘い声で囁かれて、俺は力なく首を縦に振った。
直後に、根元を握っていた手の圧迫感が消えて、上下に激しく抜かれる。
「ぁ゙ぁっ!ぁっ、はっ……あ゙ぁ───っ!」
「っ、は……」
良い所を突かれた瞬間、俺は甲高い声を上げて精を放った。ほぼ同時に拓海もイッて、ナカに大量の白濁を吐き出される。
「はぁ、兄貴……」
拓海が普段なら絶対聞かないような優しい声音で名前を呼んで、頭を撫でてきた。
(たくみの手…あったかい……)
射精後の余韻と手の心地よさを感じながら、俺は意識を手放した。
***
それから俺は拓海の部屋で夕方近くまで爆睡してしまった。
だから、家に帰ってきた和兄と拓海の会話を聞くことはできなかった。
どんな会話だったかというと……。
「……よぉ。クソ兄」
「……帰ってたのか。文弥は?」
「兄貴なら俺の部屋で寝てる」
「……昨日あれだけ可愛がってやったのに、まだ足りなかったとはな」
「はっ、どうだか?好き勝手されて災難だったんだろ。代わりに俺がヨくしてやったんだよ」
「分かってないのはお前の方だろ。文弥は淫乱だから少しくらい酷くしないと満足できない」
「ふーん、じゃあ今度どっちが兄貴を喜ばせられるか勝負すっか?」
「面白そうだな」
……まぁ、聞いてなかった方が幸せだったかもしれないけど。
これが俺の、俺達の、日常茶飯事。
*End*
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