櫻井家の食卓
5
というか、それじゃ拓海は始めから知ってたんじゃないか。
拓海の、俺を抱き締める腕に力がこもった。
「やっぱり抱かれたんだな」
「ッ、あれはっ!和兄が無理矢理……!」
「抱かれたことに変わりねェだろ」
「わぁっ!」
解放されたと思ったら一瞬でソファーに押し倒された。両手を片手でまとめられて、頭上に押さえ付けられる。
「なっ、何するんだよ…!」
「んー?アイツだけイイ思いさせられねェし?」
「何わけ分かんないこと……ぁっ!?」
拓海は俺のシャツを素早くたくし上げると、いきなり乳首に舌を這わせた。もう片方も空いた方の手で摘まれてぐりぐりと弄られる。
言い忘れていたけど、拓海はバイだ。気持ち良いことが大好きで、男女構わず誰とでも寝る性癖の持ち主。見た目が良いから拓海に抱かれたいって思ってる奴はたくさんいるだろうし、セフレもいっぱいいるらしいから困った奴だ。
でも一番厄介なのは、こうやって俺にも良くちょっかいを出してくること。
「んぁっ…こんな所でっ…誰かに見られたら…!」
「俺等と保智以外誰もいねェよ」
「はっ、保智っ…?」
そういえば保智がいたんだ!……俺は縋るような思いで保智を見る。
けど……。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……!」
やっぱり興奮してるー!目がマジで怖いんですけど!ていうかお前助けろよ!なにガン見してるんだ!
「くくっ、保智も兄貴の恥ずかしい姿見て興奮してンだよなァ?」
「ぁっ!ゃぁっ…!」
乳首を舌で転がされて、反対側は指でしつこく嬲られる。そこはすぐに硬くなって、先端からジンとした痺れが走った。
冗談じゃない……拓海にまで好き勝手されてたまるか。
「ぁっ!た、拓海っ、本当に止めっ…!」
「うっせェな。大人しく抱かせろ」
「ッ、何だよそれ!ふざけんな!」
俺達は恋人同士なんかじゃなくて兄弟だ。それ以前に男同士だろ!
「俺はお前のセフレじゃない!ホモでもないし、お前みたいに抱ければ誰でも良いわけじゃないんだよ!」
身体を捩って叫んだ俺に、拓海はピタリと動きを止めた。
「へぇ……兄貴そんなふうに思ってたのか?」
言葉を発した声はさっきよりも低くて、恐る恐る顔を上げると、鋭く細められた目と視線がぶつかった。
あれ、何か怒ってる……?
「そうか、よーく分かった」
分かってくれたか。だったら早く退いてほしいなぁ……。
そう思って手を動かしてみたけど、余計に強く握られてしまった。
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