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隠された想い


午後11時頃、夜遅くにチャイムが鳴った。

黎哉だ、と思って慌ただしく扉を開ける、が僕は思わず固まってしまった。


「どーも。杉谷黎哉君をお届けに参りましたよ〜。」

見るからに酔い潰れている黎哉を背負っているのは、爽やか系のイケメン。


「どうも……。」

気に食わないが、黎哉の同僚か何かだと思うと、無下には出来ないから余計腹立たしい。


黎哉を受け取り、扉を閉めようとしたとき、男が無理矢理中に入ってきた。

「ここまで送ったんだからさ、お茶ぐらい頂戴よ。」

ニコニコと笑いながらそう言うこの男の顔面をぶん殴ってしまいたい。




**********
結局、僕は黎哉を寝室に運び、男──金井(勝手に名乗ってきた)をリビングまで案内し、ソファに座った金井に茶を出してやった。

「どうぞ」
「あぁ、ありがとう〜」


茶を出したあと、俺は金井から離れた位置で立ったまま自分にいれた茶を啜る。

「そんなに離れなくてもいいじゃないか。」

苦笑しながら自分の隣を空けて席を進めてくる金井を無視する。


「茶飲んだら帰ってください。」


黎哉と僕だけの空間にこんな他人が乱入してくる事が許せない。

激しい苛立ちにギリッと奥歯を強く噛み締める。その時、目の前にふと影がさした。


顔を上げると、目の前には同じ位の金井が立っていた。驚いて後退ろうとするが、僕は壁に凭れ掛かって立っていたので場所がなかった。


「何か?」

僕は金井を睨み付ける。すると、金井は苦笑しながら頭をポリポリ、とかいた。

「いやぁ〜。黎哉君もいいけど、弟君もいいなぁ……なんて〜」

「は?」


金井の言っている、意味が分からない。否、それより、『黎哉君もいい』?
それはコイツも黎哉の事を狙ってるって事か!
しかも、『も』って……僕もか!!


ふざけるな、と頭に血が登った瞬間、コップを落として殴りかかっていたが、金井はムカつく事に余裕綽々に避けやがった。


そして、殴りかかった腕を取られ、床に押し倒された。

「殺す………!!」

両腕は上に束ねられ、身動きが取れないが、足は自由に動かせる。金井の両手は僕の腕を押さえるので精一杯だから。


だから、僕は思いっきり蹴り上げた。何処をって───男の急所を。
だが、それと同時に横から誰かに突き飛ばされてた。誰っていっても、黎哉しかいないんだけどさ。



「ぐぁ………!!」


金井はそこを大事そうに押さえながら、悶えていた。自業自得だ。


「金井!俺の昂に何すんだよ!とっとと帰れっ!」


珍しく、黎哉が本気でキレてる。しかも、『俺の昂』って……襲っていいかな。

未だに悶えている金井を引き摺って、玄関に連れてこうとしている黎哉を見て、俺も手伝ってやる。

「二度と来んなよ。金井さん。」


外に放り投げるようにして金井を追い出し、一言だけ吐き捨てて鍵を掛ける。本当は下のゴミ捨て場まで運んでやりたいが、面倒臭い。


リビングに戻ると、黎哉が俺に駆け寄ってきた。

「昂大丈夫か?何もされてないか?」

眉を下げながら、聞いてくる黎哉はすごく可愛い。こんなに一生懸命なのも可愛い。もう、全てが可愛い。



「ねぇ黎哉、消毒して?」

金井がしたことは許せないが、せっかく黎哉がこんなに心配してくれているんだ。利用しない手はない。

甘えるようにして、黎哉の肩に頭を刷り寄せると、黎哉は眉を下げたまま、優しい手つきで俺の頭を撫でた。







優しすぎるんだよ、黎哉は────

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