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隠された想い



「…よし。」

晩飯を作り終え、無地の黒のエプロンを外しながら黎哉を呼びに部屋に向かう。中に入ると、何故か体育座りでぼーっと外を眺めている黎哉がいた。


黎哉は昔から暇さえあればぼーっとしていて、目を離せない危なっかしい兄だった。



「兄さん。」


危なっかしいのは社会人となった今もだけれど。



「うん?」

無意識なのか、振り向きながら首を小さく傾げる。……ほら、こういう無意識の仕草が危ないんだよ。


僕は、そんな事を考えていたなんて悟らせないように、苦笑を溢す。仕方ないな、というように。


「もうご飯出来たよ?」






だってこう言えばさ






「えっ……あ、ごめんな昴。」


ほら、黎哉は申し訳なさそうにして、立てた足の間に首を埋めて悩んでいるポーズをとるんだ。





これも無意識の癖だ。この体勢だと旋毛(ツムジ)が覗く。僕はその白くて細い首筋に舌を這わしてやりたくなる衝動に駆られる……。




だが、そんな事をすれば純粋な黎哉に嫌われてしまうのは目に見えている。






だから────






「…黎哉。どうしたの?また、しっかりしなきゃって悩んでるの?」


今はふわりと背後から抱き締めるだけ。黎哉はびっくりして一瞬だけ肩が震えたが、すぐに俺の体に体重を預けてきた。






黎哉ってば、本当に警戒心がないなぁ…
まぁ、実の弟に警戒する方が可笑しいけど。






「黎哉はいつも通りでいいんだよ?
……僕も結構甘えているんだから、さ。」








そうだ。僕も『甘えてる』…。純粋で鈍感で、警戒心がない所に漬け込んで、『良い子な弟』を演じてる。





「黎哉、どうしたの?そんな悲しそうな顔されたら僕も悲しい………
ね、お願い。笑って?」



優しく、甘い声で黎哉に囁く。黎哉は僕の声が好きだと思う。





だって、今もうっとりした顔で僕の顔を見てくる。

だけど、すぐに沈んだ顔で目線を下にさげる。きっと、自分は平凡だとでも思っているんだろう。




たしかに、黎哉は特別顔が整っているわけではないかもしれない。


でも、カワイイ。笑顔なんて特に最高に可愛い。だから、そんなに落ち込む必要なんてないのに。







「ごめんな。俺が情けなくて……飯、食おうか。冷めちゃうしな。」


黎哉はそう言ってするりと腕の中から離れてしまう。
腕の中の温もりが消えてしまった事を残念に思いながら、部屋を出ていった黎哉をじっと見ていた───。
















黎哉、今は『良い子な弟』でいてあげる……

でも、覚悟しておきなよ?







いつか、絶対に黎哉の『男』になってやるから……。







そうしたら、嫌でもどろどろになるまで甘やかしてあげるからね?


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あきゅろす。
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