華の人 ◇ 活気溢れる街中を車で走る事30分、俺達は山のなかに佇む小さいビルに辿り着いた。 「……何だ、意外と小さいな。」 「あぁ、しかも山の中にあるとは思わなかった。」 別に山の中にあるのは別に不思議ではないが、明彦にしたら不思議なようだ。 「こんなに小さいのに、なんであんなに手こずってたんだ?」 「えぇーっと、ですね……。と、とりあえず中に…」 運転手が微妙な顔で中に入るよう進めてきたので、俺達は訝しく思いながら、運転手の案内に従って歩いた。 ************ 「「………………」」 案内された部屋に入って、俺達は自分の目を疑った。 どうなっているのか、説明をすると、潰したとはいえ、敵地である場所で暢気に眠りこけているグロヴィアに、何故かそのグロヴィアに膝枕をしている、端正な顔立ちの中国人の男…… たしか、依頼されていたマフィアのボスだった気がする。つまり、敵同士である筈の奴等が何故か仲良くなっているのだ。 『誰だお前は!』 俺に気付いた男がグロヴィアを庇うようにして、俺達に向かって中国語で怒鳴った。 「………デキちゃったのか?」 「みたいだな。」 明彦が呆然絶句いった様子で呟いた。俺はそれに淡々と答えたが、内心、不思議でならない。まぁ、組織に害がなければどうでもいいんだが。 『おい!答えろ!』 再度、男が怒鳴る。 『俺はそれの所属している所のボスだ。』 「……?陛、下?」 男がぎゃーぎゃー言うからグロヴィアが目を覚ましちまったじゃねえか。…面倒臭ぇ。 「グロヴィア、良いから寝とけ。」 俺のその言葉にグロヴィアは小さく頷き、また眠りにつく。 『で?なんでお前とグロヴィアが仲良くなってんだ?』 『お前じゃない、李籃麗(リランレイ)だ。』 どうでもいいだろ、と思いながらあっそ、と言ってやる。 『で?今の状況の説明は?早くしろ。』 『俺に指図するな。』 さすがにボスだけあって、気位は高いようだ。だが…… 『陛下に向かって何言ってるの?』 お前の膝には俺の忠実な狗がいる事を忘れるな? それにしても、高麗が俺に歯向かっただけで、目を覚ますとかどんだけ俺に忠実なんだ。まぁ、結果的に助かったわけだけど。 「グロヴィア、こっちに来い。 俺がそう言うと、大人しく俺の所に来て、高麗を睨み付けるグロヴィア。 対して、睨まれている高麗はショックを受けたような顔で俺達を見ている。 どうしよう、ものすごく苛めてやりたくなってきた。 「K…あの男からかうのもほどほどにしろよ。」 今まで黙っていた明彦が背後からそう言ってきた… 後ろ姿で分かったのか? [*前へ][次へ#] [戻る] |