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華の人


私達がニコニコと笑い合っていると、気まずそうに明彦さんが声を掛けてきた。

「えっと…タカ、さん?でしたっけ?……ちょっと、いいですか?」


「はい、何ですか?」

ジャックが明彦さんを軽く睨んでいたが、気付かないフリをして明彦さんの方に顔を向けた。


「あの、タカさんはKが何であんな事を言ったのか……分かりますか?」


『あんな事』…それはなんの事でしょうか?

私は首を傾げてみせると、明彦さんはハッ、と何かに気付いた様に目を見開いた。

「あぁ、すみません。タカさんはその場にいませんでしたよね、変な事を言い出してすみません。」


その場にはいませんでしたが、見てました。それこそ貴方達が急にセックスを始める前から。




さすがに其れを言ったら可哀想かな、と思うから言わない。


一応言っておきますが私は人の濡れ場を見て楽しんでる様な変態ではありませんよ。断じて。


「…なんの事を言っているのか分かりませんが、陛下の考えている事は分かりません。
陛下も所詮はただの人間。歳を取らないとはいえ、ね。」

足を組みながらそう言うと、明彦さんは驚いた様に私の顔を凝視した。知っているのは自分だけだと思っていたんですかねぇ。


「私は陛下がいた研究所から外にだしたので、知っていますよ。あとは、銀狼とジャックが知っています。」

明彦さんの疑問を解いてやるようにして言えば、更に目を見開いた。


「そう、だったんですか…」


複雑そうな顔で歯切れの悪い声だった。


自分だけが知っているという優越感が消えた


でも知らないで非難されるよりはマシかもしれない


きっと、明彦さんの中ではそういう矛盾した感情が生まれているから『複雑』なのだろう。


「明彦さん、人の心というのは『矛盾』で構成されているんです。…今の貴方のように。」


明彦さんはまた私の顔を凝視した。今度は驚きと動揺の色を浮かべて。

「そしてまた、陛下も『矛盾』している。
陛下は貴方に『愛して』ほしい。だけど『憎んで』も欲しい。
『覚えて』いて欲しい、でも『忘れて』欲しい。
貴方は知らないかもしれませんが、陛下はそんな事を考えているんですよ?」


決して口にはしないが、明彦さん関係の事となると、途端に分かりやすくなるから陛下は面白い。



「……………………」

明彦さんは黙って私の話を聞き入っていた。

「矛盾は一種の『混乱』です。陛下は自分の矛盾にとっくに気付いているでしょうね。だから、混乱してまた新たな『矛盾』が生まれる。
今のままではそれの繰り返しです。だから、今は陛下と、貴方に時間をさしあげましょう。と言っても、行動を急ぎ過ぎた私の責任でもありますが。」


苦笑いを浮かべてそう言えば、肩の力が抜けたように明彦さんも微かに笑った。


ここから先、どう動くのかは彼等が決めること。

そして、陛下のいう私の『シナリオ』の通りにいかない、と言うなら無理矢理『シナリオ』を書き直せばいい。

EDが最初のシナリオと同じであればいいのだ。

途中経過はどうでもいい。



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