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華の人



AKI side



「…K?」

俺の服を握り締めていた手がスルリと落ちた。

Kは涙で微かに潤んでいる瞳で見上げてきた。
久々に見るKの色気に思わずドキッとするが、次のKの言葉に固まる。



「俺はここを出ていく。…だから、お前とはもう会わないつもりだ。」


そう言ったKの瞳は真っ直ぐで……


「な、何でだ!?」


やっぱり、Kに無理矢理話させたのを怒っているのかと思った。
だが、Kが宥めるように俺の腕を2、3回軽くポンポン、と叩いた。





「お前は俺を憎んでなきゃ駄目だ。」





まるで俺にそう思い込ませるかの様に静かに、囁く様に…………





「お前は俺の顔を見た時、ものすごい殺気を放っていたじゃないか。」






Kは端から見たら無表情だが、目には悲しみの色が散らついていた………





こんなにKを悲しませた数十分前の自分をぶん殴ってやりたい。




「それに俺はお前が思っているほどキレイじゃないしな。」






そう言ったKの自嘲気味な声音に胸が締め付けられて………







「いい機会だし…俺は暫く日本を出ていくよ。」








こぼしていく……
大切なモノがた俺の手の内から……
記憶が戻ってやっと見つかったのに───





自分のせいで───!!







「K…俺はお前を手放す気は毛頭ない。」


自分でも驚く位低い声だった。でも今はそんな事を気にしている場合じゃない!




「あき……」

戸惑った様に俺の名前を呼び、ただならぬ雰囲気を察してか、俺の腕から離れて距離をとる。





自分の馬鹿な行為のせいでKが離れていくなんて───




そんなの、俺が許さねぇ……




監禁してでもKを近くに留めて置きたい…!






そうやって強引にでもこぼれ堕ちるモノは掴むしかないんだ───。







もし仮に俺の醜い感情がKにバレて愛想をつかれても

俺は距離をとるKに大股で近付き、腕を強引に引っ張って近くに停めていた、車の中に押し込む。


「明彦…!何処に連れていく気だ……!?」


Kは驚きながら俺を怒鳴り車を出ようとするがロックをかけてKがロックを外す前に車を出す。




「俺のマンション」




たった一言そう言っただけ…だがKはその一言で悟ったようで、溜め息を一つだけついて大人しくなった。



「明彦…俺を抱くつもりなのか?」



やはり、そこまで解っていたか…。



少しだけ、冷静が戻る。


「なぁ、明彦。そんなに俺が好きなのか?」

Kが外の景色を眺めながら言った。もう、逃げようという気は無いのか、信号待ちでも黙って座っていた……



「当然。…正直、また俺から離れるなら監禁でもしてやろうかと思ってる……。」

「…………」

横目でKを見れば、驚いた様に目を見開いていた。Kの無表情が崩れるなんてかなり貴重だ。

Kの表情を引き出せる事にちょっとした優越感を覚える。


「……お前は私を捨てて……忘れて…………
それで、幸せな……家庭を築くべきだろう…………」
呆然としているかのようなKの呟きにさっきまでのいい気分だったのが霧散し、眉を顰(ヒソ)める。
幸せな『家庭』、ね…………




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