華の人 ◇ K side 俺の頭の中がすぅっと冷えていく感じがした。 明彦が俺を憎んでいるのはわかる。だから、この俺の全てをぶちまけさせて自分の正体を明かさせうとしている…。 多分、俺の事は碓氷に聞いているのだろう。さっき驚いていたのは多分この外見。 ……そりゃ10年以上前と姿が変わってなかったら驚くよなぁ。 まるで他人事のようにぼんやりと考えていた。 やっぱり、俺はここに戻るべきでは無かったな… 今まで何度となく思ってきた事だが、今ほどここへ来た事を後悔したのは初めてだ………… 俺は、全て親切に答える気はないので、人体実験の『モルモット』にされた、とだけ言った。 それだけなのに信彦達の顔色が真っ青になった。 …誰も『モルモット』になった経緯とかは聞こうとしない、か…話したい訳でもないけど。面倒だし。 「……今は?」 明彦は一人だけ平静を保っていた。 いや、保っているフリをしている。声が微かに震えているのが俺には分かった。 …………これで、勝手に消えた俺を許したりしたら、明彦はお人好しバカだ。どうしようもない…バカ野郎だ。 明彦は俺を憎めばいい。 自分を置いて何処かに消えて、勝手に自分の記憶を消した最低な奴だと、憎めばいい。 …………そして叶うならば、俺を忘れるな…… 「今は世界中の警察が片付けられない仕事を代わりに行う組織にいる。以上だ。」 もう、ここにはいられないな。俺は荷物を持って立ち上がり、未だに固まっている4人を視界の端に置きながら、リビングを静かに出た。 「昌夜………」 「!」 小さく聞こえた俺の昔の名前。 今は一人しか知らない俺の名前……。 だが、俺は立ち止まらずに早足で玄関へと向かう。 だって、今の俺の名ではないから。 「待て!昌夜!」 「誰?それ。俺はKだ。」 玄関を出た所で、明彦に肩を掴まれ、無理矢理振り向かされる。 仕方なしに明彦向き合い、冷たくあしらう。俺は自分でも驚く程、何の感情も含んでいない声が出た。 でも丁度いい。それで怒りが増せばいい。 なのに 明彦は傷付いたような顔をする。 バカだな。何でお前がそんな顔をする。 さっきみたいに俺を睨めよ。 「しょ…K。」 「あぁ、金ならちゃんと振り込むから。安心しろ。」 離れないと 「金の話じゃない!俺は…お前を傷つけた…!」 いつお前が俺を傷つけた…? . [*前へ][次へ#] [戻る] |