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story
迷探偵・ひよこちゃん
ギロチン。そう呼ばれる小さな国がある。
本当の名前はもう誰も覚えていない。
国のど真ん中に大きな首切り台があり、それを見た者がそう呼び始めたらしいが・・・あとは他の国となんら変わりない。
平和で物騒な、壊れた国だ。


さて、そんな国の中でもちょっと怪しげな人間が多い街がある。
建物はいたるところに落書きだらけ。
薄汚れた道に粗末な露店が立ち並んでいる。

その街のはずれの古びた小さな家で、その少女は暮らしていた。
ぱんっと窓が開く。
中から小さな頭が出てくる。
「わっほー!朝だよ朝ー!隆さんおきておきて!」
少女は黒猫の隆さんを揺さぶる。
うなーっと隆さんは不機嫌そうな声を出す。
朝もなにも、もう12時をすぎているのだが、少女は気にならないらしい。

少女の名前はひよこ。
中学1年生である。
かなり小柄で、身長は140もない。
肩につくくらいのうすい黄色の髪。
大きな赤い目。
美人とか美人じゃないとかはさておき、かなり目を引く少女である。

「あーあー。今月に入ってまだ一回も仕事が来ないんだよ。なんでかなー。平和なのかなー。僕的にはもうちっとスリルがあるほうがうれしいんだけどなー。じゃないと生活できないし」
ひよこはぐでっと寝そべってぼやく。
玄関には木の板が立てかけてあり、「迷探偵の事務所」とかいてある。名探偵の「名」の字が間違っていることに本人は気付いていない。

そんな怪しすぎる事務所をたった一人で営んでいるのだ。・・・客なんて来るのだろうか?

それが、たまーに来るのがこの国の恐ろしいところだ。
まぁ、ちょっとした浮気調査というのが一番多いが、幼い容姿のひよこは、結構警戒されずに尾行ができるため、仕事は意外と上手くいくのだ。


そんな日常の中、この日も調査の依頼が来た。
ただまぁ、この依頼、・・・少し厄介だったのだ。


どんどんどんっ
ドアをたたく音がする。
ぴくっと、ひよこの耳が動く。
「はいはいはーいっ今あけますー」
ドアを開ける。
「あ・・・?」
外に立っていた少女が、少し驚いたような顔でひよこを見つめる。
長い髪に長いまつげの、とても美しいしょうじょだった。
「おねえさん、僕に依頼かな?」
ひよこは首をかしげて少女に問う。
少女は、
「え、あ、あなたが探偵の、ひよこさん・・・ですか?」
と、(信じられない)というかんじできょとんとした。
まさか名(迷)探偵が、こんな小さな女の子だとは思わないだろう。
「そうだよー。僕、名探偵のひよこなんだよ。君は、どうしたんだい?」
少女は覚悟を決めたようにすっといきを吸い、
「・・・調べてほしい人がいるんです」
そう言った。

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