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短編集・読み切り



「シコってないのに、センセのチンコビン

 ビンだ。
 
 それってハメ撮りされてるから?

 それともここが病院だから?」


 芹澤の楽しげな問いに答えたくなくて首

を横に振る。

 芹澤にはもう見透かされているのかもし

れない。

 けれど年上として、担当医として、一人

の人間として、それを認めてしまうことは

できなかった。

 つまらない、けれど最後の砦とも言える

意地だ。


「ふーん?

 真昼間からこんな場所で変態チンコおっ

 立てて腰振ってるようなセンセが何を気

 にしてるのかは知らないけど。

 でもさっさとしないと、誰か入ってきち

 ゃうんじゃない?

 ケツにチンコ突っ込まれて勃起してるセ

 ンセを見たら、どう思うだろうね?」


 芹澤の言葉が耳に刺さる。

 芹澤はどんな言葉で私を詰れば最も効く

のかをよく把握している気がする。

 心は容赦なく抉られるのに、浅ましい体

は緩慢な動きでしか突き入れてこない芹澤

のペニスに切ない締め付けを繰り返す。

 それを彼は気づいているのかもしれない。


「は…やく、イかせて」


 消えりそうな声でやっとそう告げると、

パンと小気味のいい音が響いた。

 痛みがなく、一瞬何が起こったのか理解

できなかったが、芹澤の掌にあやすように

尻の表面を撫でられてそこを今しがた叩か

れたのだと知った。


「え?何?

 聞こえなかったから、もう一回」


 口調は芹澤にしては優しめだったが、有

無を言わせない空気があった。

 彼が納得するような卑猥な言葉を並べて

おねだりをしなければ終わらない、と沈黙

が告げていた。


「っ…。

 その硬くて太いチンポで奥をゴリゴリ擦

 って変態チンポをイかせてくださいっ」


 今まで“変態”なんて単語はただ言わされ

てきた言葉だった。

 それが口から滑り出した瞬間に芹澤のペ

ニスをキュッと締め付けてしまう。

 それが何故なのか、うっすら気づきかけ

てきた。


「へぇー?

 この前までイけなくてもいいって言って

 たくせに、ケツだけでイけるようになっ

 たらやっぱりイキたいんだ?

 …俺にケツをガンガン掘られてよがり狂

 っちゃう変態センセ、あのDVD観なが

 ら何回ヌいた?」


 ドクンッ

 胸の奥で鼓動が跳ねた。

 耳にかかった吐息はいつも以上に低く意

地悪い。

 芹澤は打ち付ける動きを止めて私の尻を

鷲掴みにして乱暴な手つきで揉んでいて、

問われた直後に芹澤のペニスを咥えたまま

窄んだ蕾をしっかりと見られてしまったら

しい。


「ぬ、抜くなんてそんな…!」

「はい、嘘ー。

 変態なセンセはケツ穴の方が正直だ。

 ほら、本当は何回?」

「あっ、揉まないで…っ」


 芹澤のペニスをしっかりと咥え込んで離

さない縁を親指の腹でぐにぐにと揉まれて

どうしようもなく腰が揺れる。

 もっと奥を滅茶苦茶に突いて欲しい。

 玩具を押し付けられたまま初めて絶頂を

迎えた体は、同じ場所を芹澤の亀頭で揉み

くちゃにされて達する事を望んでガマン汁

を溢し続けていた。


「さ、…三回」


 本当の事を白状するとあまりの羞恥に顔

が火照り、続きを強請る縁がもっと奥へと

芹澤のペニスを咥えようと腰を揺する。

 我ながら浅ましいと思う。

 人として、医師として、失格な言動をと

っている自覚はある。

 だが、今は全てを押し流すほど芹澤に溺

れていた。


「3回?3回もヌいたんだ?

 へー、ますますホンモノだね。

 で、ヌきながら自分でケツ穴開発してイ

 けるようになったんだ?」


 背中に降ってくる芹澤の笑い声に、縁が

律儀に反応してしまう。

 芹澤と唯一触れ合っているその場所で、

体の内側のだけでなく心まで土足で蹂躙さ

れ体を火照らせていることを隠しようもな

く曝していた。


「開発なんかしてない。

 イッたのはさっきのが初めて…」

「へー、それは本当ぽいね。

 じゃあ初めてケツだけでイッた瞬間もバ

 ッチリ録画できたってことじゃん。

 良かったな、ズリネタが増えてさ」


 こんな風に心まで見透かされて土足で踏

み込むようなことを許した覚えはない。

 しかし悔しくて唇を噛んだところで、芹

澤が腰を打ち付け始めると信じられないく

らいあっさりと体はそちらに集中し始めて

しまう。

 いつまでもこんな格好でいるわけにはい

かない。

 けれどそれ以上に芹澤にあの場所を嬲ら

れて絶頂したい欲の方が強かった。

 惨めで浅ましい。

 けれど自己嫌悪が深まれば深まるだけそ

れはペニスから溢れる汁に変わっていくよ

うだった。


「んっ、ふ…ぅっ」


 声が漏れぬようにと指を噛んでも上擦る

息は隙間から溢れだす。

 もう問答に満足したらしい芹澤は私の腰

を掴んで本格的に腰を打ちつけ始める。

 芹澤のペニスを咥える淵の隙間から濡れ

た音がひっきりなしに響き、肉棒のエラで

奥の一点を手荒に押し潰される度にえも言

われぬ快楽が電流のように背筋を伝って脳

髄まで痺れさせる。

 蕾は酸欠にでも陥ったように穿ってくる

芹澤のペニスを深くまで呑み込み、抜けそ

うなほどギリギリまで引いていく肉棒に縋

るように絡みつく。

 剥き出しの神経を乱暴に弄られると快楽

以外の煩わしいことが脳裏から全て溶け堕

ちていく。

 腰を打ち付けてくる度に響く肌のぶつか

る音すら耳に心地よく、透明な体液を零し

続けるペニスを揺らして腰を突き出した。


「ホント、今日スッゲー締まるんだけど。

 ケツ掘られなきゃイケなくなる日も近い

 んじゃね?」


 腰使いのスピードを上げながら息を荒げ

た芹澤の笑い声が背中から降ってくる。

 しかしもう快楽を追い続けている思考に

はそんな事は些末な事で、たとえその言葉

を聞く余裕があったとしても愚問でしかな

かった。

 知ってしまったら知らなかった時には戻

れない。

 戻るつもりも、もうない。





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あきゅろす。
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