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短編集・読み切り



 しかし馬鹿二人じゃないが、穴があれば

突っ込みたいほど性欲盛んな年頃なのはオ

レ達だって同じことだ。

 今まで遠慮も無しにオナホにしていた岡

本に手を出しにくい状況になってもそれは

変わらない。

 むしろ岡本を介さずに直接触れて達した

という事実は、色事を欠片も覗かせないや

りとりを繰り返す日常を表面上続けていて

も消えてなくなりはしなかった。

 水面下で蠢くその感情に気づかぬふりを

して目をそらしても、自慰の度に思い出す

のは精●を丁寧に飲み干す岡本の口内では

ない。

 気がつくと満足に愛撫とも呼べないフ●

ラをしていた時の島崎の顔とか吐息を思い

出して右手を動かしていた。

 それがどうしてなのかとか、どんな感情

なのかとかいう煩わしいことは考えたくな

い。

 そして毎夜そんな風に体の熱を発散させ

ながら、学校にいる間はそんなことはおく

びにも出さなかった。

 島崎も島崎で、あの日の事を蒸し返すよ

うな言動は一切しなかった。

 いや…島崎の場合は単に蒸し返してオレ

の不興をかうことを避けただけなのかもし

れないけど。

 そんなわけで傍から見れば岡本に手を出

す前の関係に戻った。

 岡本には必要以上にこちらから声をかけ

ることはなく、勿論あちらから声をかけて

くることもない。

 それ以上でも、それ以下でもない関係。

 高取とは会話はするけれども深く突っ込

んだ話はしないし、まして休み時間ごとに

教室から消える岡本の話題なんて一度も出

なかった。

 表面上は以前と同じ距離感になっただけ。

 以前と同じようでいて以前とは違う日常。

 上っ面だけでもそう振る舞えることに安

堵しながら、けれども水面下で渦巻く感情

は決して穏やかとは言い難かった。

 それが何なのか、気づきたくなくて持て

余す。


「なぁミツ、今日の放課後は空いてるだ

 ろ?」

「うん?うーん…」


 帰りのHRが始まる直前の気だるげでい

て解放感の滲む独特なざわめきの中でヒデ

に問われ、先約は何もなかったかと記憶を

探る。

 視界の隅に鞄の中に教科書を突っ込んで

いる島崎の姿が目に入り、もう島崎は誘わ

れたのだろうかとヒデに視線を戻す。


「メンツは?」

「今のとこ、野坂と尾山と島崎。

 それと俺」


 馬鹿二人と島崎とヒデというメンバーら

しい。

 馬鹿二人も岡本の件やら目に余る部分は

あるけれども根はそこまで悪い奴らではな

い。

 馬鹿であるのは変わりないけど。


「じゃあ、行」

「おーい、HR始めるぞー。

 全員席につけー」


 言いかけた言葉を絶妙なタイミングで教

室のドアを開ける音が掻き消し、担任の野

太い声がかぶさってくる。

 1分でも早く帰りたいクラスメイト達は

大人しく各々の席に着席して大人しくなっ

た。

 HRをさっさと終わらせてしまいたいの

は担任も同じらしく、少しばかり早口で連

絡事項を消化していく。

 それを早く終わらないかなとボーっと聞

いていたら背中をシャープペンでつつかれ

た。

 “で、どうすんの?”

 口パクでヒデが答えを促してくる。

 急かすほど早く答えが欲しいのかと呆れ

ながらも簡潔に答えた。

 “行く”

 答えた直後にヒデは嬉しそうに笑って親

指を立ててくる。

 機嫌がいいあたり、グループで遊びに行

くと割引が適用される様な娯楽施設にでも

行くつもりなのだろう。

 そういえば顔に似合わずダーツゲームに

ハマっていると最近はしゃいでいたような

気がする。

 これはHRが終わり次第引っ張っていか

れるに違いない。





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