短編集・読み切り ∬ 「ねー、ミツ。 夏休みの宿題やってきた?」 夏休み明けの朝の教室は騒がしく、目の 前の席ではまだ席の主が登校前なのをいい ことに島崎が陣取ってこちらに体を乗り出 してきながら話しかけてくる。 「うるさい。 見たいなら野坂とか尾山に見せてもらえ ば?」 机の上半分を占拠しそうな島崎の腕を邪 魔だとベシベシ叩きながら机の上から追い 出す。 そもそもバカ島崎の顔なんて当分見たく なかった。 鳥頭の島崎は夏休みのアレやコレをまさ か忘れてしまったのか。 いや、大方忘れたフリをして押し切って しまえばいいと都合よく考えているに違い なく、それが余計に俺の神経を逆撫でする のだ。 「あの二人は解答欄をテキトーに埋めとけ ばいいって感じだから放課後呼び出しく らうし」 「自力でやってこなかった自分が悪いんだ ろ」 [*前] |