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短編集・読み切り



    ◇ - ◇ - ◇ - ◇


「んっ…ふぅ…っ」


 放課後の人気が無い特別教室で岡本は悩

ましい声をあげていた。

 学ランを脱ぎ白いシャツの間から見える

白い肌にはびっしりと黒いインクの線が所

狭しとひしめいている。

 そんな体なのに高取が呼びつければ岡本

は大人しくついていって惜しげもなく肌を

晒す。

 新しい落書きが増えても、既にある落書

きの上に上書きをされても、口から出るの

は文句どころか押し殺したような官能的な

吐息だけだ。

 ペン先が肌の上を撫でることが既に愛撫

と同等の快楽をもたらすのか、ズボンと下

着を足首までずり下した無防備な下半身は

吐息の度に勃起ペニスから先走りが流れ出

させている。


「動くな」

「ぁっ、ごめんなさい…っ」


 高取の不機嫌な声に岡本は上擦った声で

謝る。

 だが岡本の体には高取の手で先程“勃起

チ●コ”という文字が上書きされたばかり

だ。

 それに類する言葉も幾つか書き込まれて

いて、もはや岡本自身の意思ではどうする

こともできない。

 高取の視線や吐息を肌に感じるだけで岡

本の体は熱くなるのに、ペン先で肌を撫で

られたら堪らない。

 岡本は快感の波に揉まれながら、それで

も堪えようと必死になった。

 高取の機嫌を損ねることは本意ではない

からだ。

 腕を壁について体を支え、乱れる呼吸を

何とか落ち着けようとする。

 その健気な努力にも高取は眉一つ動かさ

ない。

 その意識はただペンを走らせている肌の

上に、もっと言えば手にしているペンの黒

インクの残量のことだけしか考えていなか

った。


「ケツ」

「は、はい…」


 顎でしゃくるような横柄な高取の物言い

に岡本は両手で自らの薄い尻の肉を割り開

く。

 本来外気に触れることは殆どないはずの

その場所さえ、既に黒いインクに浸食され

ている。

 もっと言えば先程から高取の細やかな挙

動に体を高ぶらせている岡本のアナルは物

欲しそうにヒクヒクと震えている。


「チッ…」


 高取の舌打ちに岡本の体がビクッと震え

る。

 口数の少ない高取が何に対して怒ってい

るのか、分からないのが一番怖いのだ。

 まだ顔を見られれば頑張れば何となく察

することもできるが、今はそれもできない。


 ぐちゅっ


「ひッ、あ…高取君…っ」


 ヒクつくアナルに前触れなく高取の指が

2本突き刺さった。

 しかし岡本のアナルは十分すぎるほど潤

った柔軟さで高取の指を受け入れ、絡みつ

く。

 高取が少々乱暴な手つきで中を掻き回す

ように動かすと、岡本は耐えきれず壁に体

重を預けながら自ら腰を突き出してくねら

せる。

 時折高取の指が意図せず岡本の弱い部分

を掠める度に射精したいように痙攣して先

走りが涙のように床に染みを作る。

 高取はほぼ毎日と言っていいほど岡本の

体に文字を書き込む一方で、岡本に自らの

精液を与えてやることは殆どない。

 あくまでもそれは高取の気が向いた時で

あり、岡本の意思の介入など高取が許した

前例はない。

 精液まみれになった岡本を夜の公園に置

き去りにして、自分はさっさと帰宅してベ

ッドの中で自慰をすることに露ほどの罪悪

感も感じてはいない。

 落書きがその力を発揮し続ける事がどう

いうことか、考えてみた事すらない。

 文字通り岡本の性欲に関する全権を掌握し

ながら、高取は大抵のことは眉一つ動かさ

ずにしてのけるだろう。

 吉光や島崎達が聞いたら思わず顔をしかめ

るような鬼畜な所業さえも。

 偽善の皮を被ることをやめたあの日から

高取の心の動きは驚くほど鈍くなった。

 その自覚は本人にはあまりないが。


「俺が呼ぶ時は洗っとけって言ってんだろ。

 好き者が」

「んっ、ぁッ、ごめんなさいっ。

 HR前で、時間、なくて…っ!」


 低く唸るような高取の声に心底怯えなが

らも、一般人ならば気が触れるほど長い時

間発情し続けている岡本の体は一刻も早く

射精したくて高取に詫びながらも腰を揺す

った。

 昼には学生や教師、夜には行きづりの相

手や掲示板の呼びかけに応じて集まった連

中に代わる代わる岡本を使わせているのは

高取自身だ。

 最近では僅かな隙すら狙われて教室から

連れ出される状況で、一日の最後の授業が

終わってから閉めのHRが始まるまでの1

0分間ですら放っておいてもらえない。

 そのHRが終わるや高取に連れ出されて、

トイレに寄る暇もなかったのだ。

 第三者から見れば岡本自身に非はないは

ずだが、岡本にとっては白いものでも高取

が黒と言えば黒なのだ。





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あきゅろす。
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