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短編集・読み切り



「ねー、ホントに寝ちゃうの?」


 殴られたばかりだというのにそれでもへ

こたれないバカの声が背中の方から聞こえ

るけど答えない。


 オレは眠いんだ。

 起こそうとすんな、バカ。


 島崎が動く気配は無く、いつもなら深い

眠りの中にいる時間のせいか瞼を下ろして

じっとしているとすぐに睡魔が舞い戻って

くる。


「…もう、寝ちゃった?」

「……」


 あと少しで寝入ってしまう意識の片隅で

島崎の声が響く。

 さっさと帰れという言葉は頭に浮かんだ

だけで声にはならず、すぅ…と呼吸がもう

一段深くなる。


「……」


 ゴソゴソ


 背中の向こうで何かが動く気配がする。

 何か温かい気配が背中にくっついてきた

のは間もなくで、その気配に眠りに落ちよ

うとした意識はギリギリのところで落ちき

らずに漂う。

 しかし一旦眠りに入ろうとした意識はそ

う長くはその状態を保てずに、ただ背中に

くっついてきただけの気配が与える温もり

を湯たんぽ代わりに深い眠りに落ちていっ

た。




 ……布団の中でトレーナーどころか下着も

脱がされた姿で目覚めたオレが、間抜け面

で寝こける島崎を拳で叩き起こすのはその

数時間後の話。




               END





[*前]

あきゅろす。
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