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短編集・読み切り



 終わった。終わってしまった。

 未だ色濃い快楽に全身が包まれているけ

れど、彼の満足そうな声を聞けばこれで解

放されるであろうことは容易に想像できた。

 やっと解放される。

 そう思わなければならないのに、それと

は相反する感情が顔を覗かせそうになって

慌てて思考の底に押しこめた。


「あ、そうだ。

 センセにいいものあげるよ」


 ふと思い立ったように彼が言い、ややあ

って今しがたまで貫かれていた穴の淵に指

先を入れられ押し広げられた。

 緊張と期待に心臓が音をたてる中、指一

本動かす気力もなく何をするのだろうとじ

っとしていた。

 やがて拡げられた縁に何か触れたと思っ

たら、重力に引かれたようにドロリとした

液体が体内にゆっくりと流れ混んできた。


「な、に…?」


 まだ息も整わない擦れた声で問うと、彼

は悪びれもなく答えた。


「俺のせーし」


 一瞬、何を言われたか理解できなかった。

 やや間があってようやくノロノロと動き

出した頭の中で漢字変換ができる頃には全

て流し込まれたのか縁を押し広げていた指

で中をグチュグチュと掻き回された。

 耳を塞ぎたくなるような卑猥な濡れた音

が自分の体内からしているのだと思うだけ

で今すぐここから逃げ出したくなる。

 放っていない自分はまだ快楽が体に色濃

く残っているが、放ってしまった彼の方は

もう素面に戻りつつあるだろう。

 その彼の目にまだ熱冷めやらぬ浅ましい

体がどんな風に映るのか考えるだけで喉が

引きつりそうだ。


「センセってすげーエロイんだね。

 男に突っ込まれて腰振って感じちゃう変

 態だし、苛められて感じちゃうマゾだし」

「そっ、そんなこと、は…っ」


 意地悪い声で言われて反論しかけたが言

葉が続かずに声が途切れる。

 とっさに言い訳が浮かばなかったのはき

っと疲れているからだ。

 それに言い訳をして彼の予測できない逆

鱗に触れたら、このまま解放してもらえな

い危険もはらんでいる。

 だから黙っているのだと、心の中で呟い

た。

 彼はそんな様子をあっけなく笑い飛ばし

た。


「何が違うの?

 今だって精子流し込まれてケツの穴弄ら

 れながら萎えるどころかビンビンに勃っ

 てるけど?」

「ッ…!」


 彼が犯したという事実も、自分が犯され

たという事実も、すでに確定されていて言

い逃れなど出来る余地もない。

 しかし一度はゴムの中に放ったものをわ

ざわざ体内に絞り出して掻き回されている

という状況は改めて事実を生々しく再確認

させられ、未だ彼の中でも僅かばかりでも

余韻が残っているのだと思うと下半身が否

応なく反応してしまったのだろう。


「…イキたい?」


 彼は至極シンプルに尋ねてきた。

 答えはYESかNOしかないのかもしれない。

 けれども…。





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あきゅろす。
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