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短編集・読み切り



「いつ、から…?」


 受験の年は来年だ。

 曲がりなりにも受験勉強を口実にするな

ら、来年の春まで猶予があるかもしれない。


「今週の土曜、この前のホテルで」

「でもまだ受験は先じゃ…っ」


 底意地悪く笑う芹澤に言葉を重ねてみた

が、あっさり笑い飛ばされた。


「来年までなんて、変態セックス大好きな

 淫乱センセには待てないでしょ?」


 否定したかった。

 けれどそれを肯定するための材料がなか

った。

 そんな私の耳にとんでもない言葉が追い

打ちをかけてきた。


「ローターさ、あと二つ買い足してよ。

 で、土曜日に会う時にケツに3つ仕

 込んできて」

「っ!!?」


 ドクンッ

 一気に耳まで熱が上がってきてとっさに

声が出なかった。


「みっ、みっつもなんて…!」


 声が情けないくらい裏返る。

 さっき仕方なくそのままにしたローター

のコードを縁が嫌というほど締め付けたの

を自覚した。


「俺のチンコあんなに旨そうに呑み込んじ

 ゃうんだし、ローター3つくらい余裕で

 しょ?」

「あっ…」


 私の目の前に立った芹澤は、そんな私の

体の変化に気づいたように私の顔を至近距

離で見下ろしながら白衣越しに尻を鷲掴ん

で悪戯に揉み込む。

 さっきまで芹澤のものを咥えていた縁が

反応し始めて泣きたくなる。

 芹澤の気分一つでこんなにも容易く意の

ままにされるのは本意ではない。


「芹澤…っ」


 今すぐやめてくれるなら懇願したい気持

ちで芹澤の腕を掴んで声を絞り出す。

 不意に芹澤の手が白衣から離れ、安堵し

て吐息を逃がす。


「ローターの電源は駅前の公園のトイレか

 ら入れたらいいから。

 待たされるの嫌いだから、18時にはホ

 テルに辿り着いてよ?」


 笑いながら、まるで何でもないことのよ

うに一方的に話を進められる。

 それはもう決定事項で、命令だった。

 どうして今週に限って学会も研修もない

のかという嘆きは、結局一時凌ぎにしかな

らなかったという慰めにもならない諦めを

前に薄らいだ。

 獲物を絡めとる糸は、獲物が思うよりず

っと周到に巻きつけられているものなのか。

 もがき始めた時にはもう手遅れなのかも

しれない。

 そして獲物の自由を奪う甘い毒は、その

頃には血管を巡り始めているに違いなかっ

た。


「ケツだけでイけるようになった記念にさ、

 せーし無くなるまでケツ穴掘ってあげよ

 っか?

 センセは変態で淫乱だから、せーし無く

 なってもちゃんとイケるし何も問題ない

 よね」


 問いかけの形をした命令。

 それに異を唱えることは許されず、一方

で芹澤の気分次第でいくらでも内容が変わ

る予定。

 そしてその言葉一つで蕾はローターのコ

ードを締め付けて、無意識に奥へと丸い異

物を更に奥へと押し上げる。

 芹澤の精液の入ったコンドームがあの場

所へ触れて震える吐息が漏れる。

 芹澤が刺し続ける毒は確実にこの体を蝕

んでいる。

 しかしそうと分かっても、見えない糸は

体中に巻き付いて抵抗どころか身動きすら

許さない。

 罠にかかった獲物に出来ることは、息苦

しい圧迫感に喘ぎながら毒に溺れ弄ばれる

ことだけだった。




              END






[*前]

あきゅろす。
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