[携帯モード] [URL送信]

短編集・読み切り



 これは仕方ない事なんだ。

 彼の目的を達成させさえすれば解放され

るのだから。

 だが、しかし…。

 繰り返し貫かれて体が声になりきらない

嬌声に染まり、言い訳が脳裏から剥がれ落

ちていく。

 これほどまでに深い快楽を今まで知らな

かった。

 全てを投げ出してでも溺れたい快楽など

この世界にはないとすら思っていた。

 そしてそんな快楽があるとしても、そん

なものに身を投げ出せるほど自分は貪欲に

はなれないとも思っていた。


「あッ、いいッ、あぁッ…!」


 シーツがあるのなら掻き毟りたいほどの

快楽が絶えず襲ってくる。

 地につま先すら尽かせぬほどの快楽が意

識を浚い、呑みこんでいく。

 拘束され身動きすらままならぬ体で、快

楽の一滴も取りこぼさないように腰を振る

う。

 今この瞬間、取り繕う為の言い訳は色を

失くした。

 何も考えずに与えられる快楽を享受し、

全てを快楽に委ねてしまいたかった。


「あははッ、すっごい締まるよセンセ。

 そんなに締めたら俺もってかれちゃうっ

 て」


 締め付ける粘膜をかき分けて貫いてくる

熱棒を離すまいと粘膜が絡みつく。

 それを失ったら呼吸すらままならないと

訴えるような必死さで。

 奥を擦り上げられる度に絶頂に駆け上が

るような、あるいは絶え間なく浅い絶頂を

繰り返すような波に揉まれながら、このま

ま時が止まってしまえばいいのに、と頭の

片隅で思う。

 それは叶わぬ願いだと分かってはいるけ

れど。


「俺、もうイクよッ?」


 笑みを含む声にはもう余裕がなかった。

 腰を振りながら頷くと彼の腰の使い方が

更に深くなり、奥に届かせるように繰り返

し突き上げられた後で彼の腰の動きが止ま

った。

 ピッタリと腰を押し付けたまま迸りを放

つ。

 荒い呼吸音だけが暫く空間を満たし、や

がてズルリと彼の一部が抜かれると上半身

を預けている台の上にぐったりと体を預け

た。

 支えがなければ崩れ落ちてしまいそうだ

ったのを支えてくれたのは彼の手だった。


「あはは…。

 マゾのセンセでもさすがに擦んなきゃイ

 ケなかったみたいだね。

 おもらしみたいに床濡らしてるから気持

 ち良かったのは間違いないだろうけど」


 まだ上向いたままの性器に触れられると

驚いて下半身が震える。

 放ってもいないのにこんなに強烈な快楽

を味わったのなんて初めてで、彼の言葉に

も快楽が色濃く残る頭ではまだまともな返

事も返せない。





[*前][次#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!