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短編集・読み切り



「ミツはさ、このままでいいと思ってる?

 岡本が高取と丸く収まるのは俺だって一

 番いいことだと思ってる。

 だけどさ、それで俺達は以前みたいに戻

 れる?」


 胸の奥が肌を叩く勢いで跳ねた。

 しかしそれを悟られてはいけないと視線

を逸らしたまま必死に言葉を探す。

 今、胸の奥底にある感情に気づいたらい

けない。

 この部屋を出るまでは、せめて。


「な、に言ってんの…?

 当たり前じゃん。

 むしろ今までが異常だったの。

 クラスメイトの…しかも男を、よってた

 かって性欲処理の為にマワしてるとか、

 どう考えても他人に話せないだろ」


 そう、正常な関係に戻るだけ。

 普通の高校生らしい友達としての関係に

戻るだけ。

 これ以外に不自然でない結末がないだろ

う。

 だから乾く喉から懸命に声を絞り出す。

 どうか鈍感な島崎が気づきませんように

と頭の片隅で祈りながら。


「岡本が高取1人のものになったら、俺達

 はもう普通の…友達に戻らなきゃならな

 い?」


 どういう、意味だ?

 早鐘を打つ心臓を煩わしく思いながら、

島崎が言わんとしていることを理解しよう

と思考がフル回転する。


「なに言ってるか、わかんないって。

 普通の友達じゃなかったら、なんなんだ

 よ。

 それ以外にどうなりたいって?」

「…あの日の放課後さ、二人きりでシたの

 覚えてる?

 あの時のミツの顔、どうしても忘れられ

 ないんだよね」


 オレのチ●ポをしゃぶりながら“可愛い”

と言った島崎を思い出し、もはや言い訳も

できない熱が耳を駆け上がる。

 しかし直後に体の奥に入り込もうとした

島崎の指先の感触を思い出して、頭から冷

水をかけられたように冷えていく。

 もしそこに“好き”っていう感情が存在

するなら、島崎の口からあんなにあっさり

と“親友”なんて言葉が出ただろうかと…

気づいてしまったから。

 だとしたら、島崎の言う言葉の真意は…。


「…ざけんな」

「ミツ…?どうし」


 島崎は自分が掴む手首の震えに気づいた

だろうか。

 力を込めすぎて小刻みに震える拳に。


「岡本が高取のものになるなら代わりが欲

 しいって、そういうことか。

 ダッチワイフの身代わりが欲しいって?

 そういうこと、オレに言っちゃうんだ?

 へー」

「み、ミツ?なんか誤解してない…?」


 沸々と怒りが込み上げてくる俺の頭に島

崎の声はひどく遠い。

 煩わしい声はいっそシャットアウトでき

てしまえばいいのに。

 耳障りな声を発しているのが目の前の口

ならば、殴ってでも塞いでやりたいと苛立

ちが拳に集まっていく。


「島崎って“親友”って言いながらオレに

 突っ込みたいとか思ってるんだ?

 どの面下げて“親友”をオナホにしたい

 って言ってんの?なぁ?」


 口元に震える笑みを浮かべながらそのふ

ざけた顔を拝んでやろうと思って顔を向け

たら、俺の拳を握りしめる手首を掴んだま

まの島崎は顔を真っ青にして首をブンブン

振っていた。


「ち、ちっ、違うっ!!ホント違う!!

 誤解だから、誤解ッ!!

 ミツをオナホ代わりにしたいなんて、考

 えたこと一度もないしッ!!

 そ、そりゃ…ミツがいいって言ってくれ

 たらしたくないとは、言わないけど…」


 真っ青な顔でまるで本音がバレたのを必

死に取り繕うように全否定した後、こっち

を舐めているとしか思えないような笑みで

付け加えられたら…。





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あきゅろす。
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