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短編集・読み切り



 その話題を持ち出すとオレがキレるとで

も思うのかちょっとビビり気味にこっちを

チラチラ見てくる島崎がウザい。

 フォローするのも面倒で目を細めたまま

さっさと言えと頬杖をつく。


「俺が岡本にしたことは…岡本の為だと思

 ってしたことは、ミツの言う通り自己満

 足が入ってたかもって。

 でも自己満足な部分もあったけどそれだ

 けじゃなくて、やっぱり岡本に気持ち良

 くなってほしかったのもあったよ。

 それもやっぱり嘘じゃない」


 ベッドの上で正座し俯いたまま言葉を探

すようにして島崎は言葉を紡ぐ。

 その表情は見えないけれど、島崎が真剣

に考えた末にそういう結論を出したと言う

のなら部外者であるオレが否定するのはお

かしい。

 だから黙って島崎が言うのを聞いていた。


「でさ、考えたんだ。

 ミツがなんであんなに怒ったのかって。

 ミツっていつもどっか冷めた目で岡本見

 てたけど、でも岡本のケツには絶対に突

 っ込まなかったなって。

 それってミツの中ではちゃんとした線引

 きがあって、つまり…岡本が本当に嫌が

 ることはしなかったってことで。

 上手く言えないんだけど、ミツはミツな

 りに岡本のこと大事にしてたのかなって」

「は、ハァ…?」


 島崎の話が思わぬ方向へ反れていって、

さすがのオレもついていけずにポカンとし

てしまった。

 何を、どう解釈したらそんな歪んだ結果

になるのか。

 バカだバカだと思っていたけど、島崎っ

てちょっと頭の可哀相な子なんだろうか。


「だから俺に怒ったのかなって…。

 でなきゃおかしいっていうか、そうする

 とミツが怒った理由が俺にも分かったっ

 ていうか。

 …違う?」


 ポカンと口を開ける俺の反応が予想外だ

というように自信なさげな島崎がこちらに

問いを投げてくる。


「違う。全然違う。

 そもそも岡本を本当に大事に思ってたら

 一番最初の高取の誘いになんて乗らない

 でしょ」


 体育館倉庫に呼び出して皆で岡本をマワ

そう…なんてそんな誘いのホイホイのるよ

うな奴が岡本を大事に思っているはずがな

い。


「あの時もミツは結局渋々ついてきただけ

 じゃん」

「それ言うなら島崎もそこまで乗り気じゃ

 なかっただろ。

 まぁよっぽど岡本が気持ち良かったのか

 知らないけど、一番乗りはいつも島崎が

 突っ込むようになったけどさ」


 オレが付け足した言葉に島崎は言葉に詰

まったように苦笑いを浮かべた。

 それにはそれ以上触れずに咳払いをして

話題をそらす。


「別にオレはそこまで岡本好きじゃないよ。

 ただみんなで岡本犯してるのに、まるで

 自分だけいい人みたいな顔して岡本犯し

 た島崎がムカついただけ。

 岡本もまさかあそこまで重症だとは思わ

 なかったけど、でも岡本の中で高取が一

 番っていうのは暗黙の了解でみんな分か

 ってたことだし。

 そこに今更いい人のツラして首突っ込ん

 でたから」


 そう。それも嘘じゃない。

 でもきっとそれだけでないことにも、オ

レ自身が気づき始めている。

 ガラにもなく高取につっかかった挙句に

“テメーの事くらい、テメーで面倒見ろよ。

俺に押し付けてデカイ面すんな”とまで言

われてしまった。

 島崎がこれから何を言うつもりなのかは

知らないけれど、少なくとも高取に図星を

さされてもそれから目を背けているような

情けない奴ではいたくなかった。





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