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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「まいったなぁ…。

 どっちに転んでも俺のええようにならへ

 んなんて」


 バスローブを掴んでじっと見つめる俺を

見て、クロードはややあって表情を崩す。


「とりあえず、個室ダイニング行こ。

 もう夕食の時間やろ」

「今はそんなこと気にしてる場合じゃな

 い」


 こんな気持ちのままどんな豪華な料理が

並んだところでちっとも美味しくないだろ

う。

 がんとして動かない俺を見てクロードは

肩をすくめる。


「美味しいもん食べたら、いいアイディア

 が浮かぶかもしれへんって言うても?」

「本当、だな?」


 明るく笑うクロードの表情がどこかしっ

くりこなくて、念押しで尋ねるとクロード

の手が頭に伸びてきた。


「そうやなぁ…駆が一緒に夕食食べてくれ

 るんやったら、もっといい案が浮かびや

 すいかもしれへんけど?」


 髪に触れた掌は温かくて、何よりクロー

ドがそう言うなら俺に選択の余地はなかっ

た。





 個室の食事処というのは和の庭園の景色

が楽しめる板の間だった。

 板の間と言ってもちゃんと座椅子はある

し、何よりテーブルの下は掘りごたつにな

っていて正座して足がしびれてしまう…な

んてことにはならない親切設計だった。

 雪深いこの地方だからこそ、掘りごたつ

にして足元の暖を提供することがおもてな

しなのかもしれない。

 道産の旬の食材を使った創作の和食会席

は、先付・前菜・椀・造里…と洋食のレス

トランのように一品ずつ運んできて、珍し

がるクロードのためにわざわざ説明をして

くれた。

 しかしクロードの向かいで料理に箸をつ

けながら、やっぱり食べ慣れているはずの

和食すら味気なくてちっとも美味しいと思

えない。

 カイルのことが気にかかって仕方ないけ

ど、俺が食べ終わらないと次の皿が運ばれ

てくるまでクロードが待たなきゃならない

ので仕方なく口を動かしていた。





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あきゅろす。
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