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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 子猫の寝顔を堪能していると母さんが憂

い顔で傍にやってきた。

 母さんにしては珍しい。

 何かを言い淀んでいるようだ。


「今日ね、病院に行ってきたの。

 拾い猫だし、お腹に虫がいたりもするか

 もしれないから」

「それで?どうだったの?」

「生後60日位でしょうって。

 お腹に虫もいたから、注射も打ってもら

 ってきたわ」

「あ、あのっ、ありがとうございますっ」


 秋月が頭を下げるのに、母さんは「いい

のよ」と首を振った。


 どうしたんだろう。

 まだ何か言いにくそうにしているよう

な…。


「母さん…?」

「うん?」

「まだ、何かあるの?」

「そう、ねぇ…」


 腕組みして言い淀む母さんは、まるでど

う切り出そうか迷っているようだった。


「秋月さん、だったかしら?」

「あ、はい…」

「この子の里親を探すって言ってたわよ

 ね?」

「はい」

「それは諦めたほうがいいと思うわ」

「どうして?

 だって秋月の家で飼えないから、里親を

 探すって言ってるのに」


 黙って母さんの次の言葉を待っている秋

月の顔にも不安が浮かんでいる。


「猫エイズって知ってるかしら?

 FIVって言うんですってね。

 人間には感染しないけれど、猫のエイズ

 のことらしいの。

 拾い猫だと猫エイズにかかっている可能

 性があるから検査しましょうって先生に

 言われて、してもらってきたのよ。

 結果は…陽性だったわ」


 ガンッと頭を鈍器で殴られたような衝撃

だった。


 母さんの言葉を黙って聞いている秋月の

顔からも血の気が引いていく。


 信じられなかった。


 今、目の前ですやすや眠っているこの子

がエイズ…?





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