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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 何もされないどころか、のぼせるだろう

からと先に上がるように促してきたのはク

ロードの方だった。

 尋ねても答えてくれない態度は軟化せ

ず、いつもと様子が違うと思いながらも俺

は先に温泉を出てきた。


 浴衣かバスローブか迷って、ちょっと長

湯しすぎたような気もしてささっと体の水

分を拭き取ってバスローブに身を包んだ。

 多少の拭き残しがあってもバスローブを

着れば水分を吸い取ってくれるのが気に入

っている。

 
「あ、あれ…?」


 一体何人掛けのソファーだろうと思くら

い長いソファに、ここにいるはずのない人

物が座っていた。

 さっきまで記念撮影だというのにニコリ

とも笑ってくれなかったカイルが相変わら

ずの仏頂面でソファに腰掛けている。


 クロードにでも呼ばれたのかな?


 当の本人はゆっくり温泉で温まっている

というのに、カイルのほうは着替えただけ

でまだ唇の色が悪い。

 俺は空調の温度を少し上げて備え付けの

電気ポットに歩み寄る。


「カイル、なんか飲むか?」

「……」


 振り返って尋ねたがカイルはこちらを向

かないどころかピクリとも動かない。

 まさか寝てるんだろうか。


「カイルってば」

「いらん」


 無駄な言葉の一切ない一言だけが返って

きた。

 その短い言葉に苛立ちと嫌悪がありあり

と浮かんでいて、俺は仕方ないと肩を竦め

る。

 そして自分が飲むついでだからと二人分

の緑茶を淹れ、湯呑に慣れていないだろう

カイルの為にカップに注いだ方をカイルの

前まで運んだ。


「クロード、もう少しかかるから。

 飲みたかったら」


 “どうぞ”とまで言わなかったのは、そ

こまで言ったら何となく突っぱねられそう

だったから。

 長いソファだから一人分のスペースを空

けてカイルの隣に座り、湯気の立つ湯呑に

数回息を吹きかけてから上澄みをすすると

豊かな緑茶の香りと味が鼻を抜けていく。

 茶葉を蒸らして…とかちゃんとした淹れ

方は知らないけど、俺が淹れたのでもこん

なに美味しいならきっと部屋に見合うだけ

の高級な茶葉なんだろうと窺い知れた。

 ついでに緑茶にはリラックス効果もある

そうだから、イライラしているらしいカイ

ルにはぜひ飲んでもらいたい。





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