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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*



 長蛇の列に並ぶ人たちに申し訳なく思い

ながらもティーカップや蒸気船を楽しむ

と、ちょうどパレードの時間になったらし

い。

 通りかかった道をクリスマス風の衣装で

着飾ったキャラクター達が乗り物に乗って

パレードをしている。


「せっかくだし見ていく?」

「駆が見たいんやったらええよ?

 もっと見えるとこ行こう」


 ゆっくりと動く乗り物を追い越すのはそ

れほど難しくなかった。

 ただ少しでも近くで見ようとする人達の

作る壁は厚く、しかも移動するパレードに

つられて動く人の波は慣れていない俺を戸

惑わせた。


「せっかくだから写メ撮る」


 携帯を取り出そうと繋いでいた手を離し

たのがまずかった。

 動く人たちに押されて携帯を取り出すの

に四苦八苦している間にクロードと離れて

しまった。


「あれっ?クロード?クロード!?」


 焦った時にはもう遅い。

 動く人々の波の向こうにクロードを見失

ってしまった。

 携帯を握りしめながらクロードの姿を探

していると後ろからぽんぽんと肩を叩かれ

た。


「クロード?」


 振り返りながら名前を呼んだが、そこに

いたのは見知らぬ青年だった。

 栗色の髪に緑の目で、彫りの深い造形は

明らかに日本人には見えない。


「(すみません。

 スプラッシュ・マウンテンはどこにあり

 ますか?)」


 時々母さんが英語を話すおかげでリスニ

ングには少しだけ自信がある。

 不慣れな日本で困っているんだろうと思

えば放っておけず、すぐに持っていたマッ

プを開いて指さしながら説明した。


「(ありがとう。よくわかりました。

 でも迷うと困るので案内してもらえませ

 んか?)」

「え…?」


 “それはちょっと…”と断ろうとしたと

ころで青年の目が光っているのに気づい

た。

 もともと緑色の目だが、明らかにもっと

明るい緑に光っているように見える。

 じっと見つめていたらすぅっと感覚が遠

のいていく。

 “何かおかしい”と考える暇もなく手の

中からMAPが滑り落ちた。





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あきゅろす。
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