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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「気持ちが大事なんじゃない?

 抱きしめたいとかキスしたいとか、そう

 いうのは自然としたくなるものだと思う

 んだ。

 だからどこまでしなきゃいけないとかじ

 ゃなくて、したい事をしようよ」

「恵、それって…本当に、いいっていう事

 ですの?」


 唇に触れた私の指先を掴んだ莉華は数回

瞬きを繰り返し、ちょっとだけこちらに体

を乗り出してきた。

 改めて確認されるとやはりちょっと気恥

ずかしかったけれど、莉華の問いに頷いた。


「キス、嫌じゃなかったから」

「…っ!」


 小声で白状すると莉華は弾かれた様に大

きな目を見開き、ちょっとだけ考え込んだ

ような間の後で膝が触れるほど距離を縮め

てきた。


「夢ではありませんわよね?」

「そんなわけないって」


 莉華の掌が頬を撫でてくる。

 その掌にはあたしの頬の熱が確かに伝わ

っているだろう。

 もっと莉華に触れてみたいという気持ち

をその指先に知られてしまわないか、少し

だけ不安だった。


「恵」


 名前を呼ばれて莉華と視線を絡めると、

あたしの頬を両手で包み込むんでいた莉華

の唇がゆっくりと重なってきた。


「…」

「…」


 触れ合う唇の熱も感触も、初めてでとて

も新鮮な感覚なのに同時に昔から知ってい

るような奇妙な安心感があった。

 それは相手が莉華だからなのかもしれな

いと頭の片隅で考えていると、莉華に唇を

軽く吸われた。

 幾度となく唇を吸われる合間に吐息が零

れても、どちらもキスをやめようとはしな

かった。


「嫌だったら言ってくださいね」

「うん…」


 長いキスの後でふわふわとした感覚を味

わっているあたしのパジャマのボタンに莉

華の指先が伸びる。

 一つまた一つとボタンを外していく莉華

の手には迷いはない。

 一方で冗談の混じらないそれは真剣その

もので、パジャマがはだけられてしまうと

ナイトブラに包まれた胸が露わになった。

 脱衣所で着替えていた時とは違う恥ずか

しさがあって、思わず目を反らしてしまう。


「ねぇ、莉華。

 電気消そうよ」

「分かりましたわ」


 莉華がベッドヘッドに置かれていた小さ

なリモコンに手を伸ばすと間もなく照明が

落ちて部屋が暗くなる。

 その暗闇にちょっとだけ安心して、けれ

ど莉華の腕に促されて再びベッドに体を横

たえると莉華をずっと近くに感じて更に鼓

動が速くなっていく。


「っ…」

「緊張してますの?」

「そりゃ…」


 私のブラをたわませた莉華の手が裸の胸を

撫で回す。

 思わず息を詰まらせ肩を揺らした私の緊張

を察した莉華に言い当てられて、緊張しない

わけないと肯定する。

 たとえ相手がよく知る莉華であっても、

今からそういう事をしようとしているのだ。

 莉華が言っていたとおり莉華自身には同

性同士のあれこれについての知識はないの

かもしれない。

 けれど“そういう空気”が今この場にあ

って、これから莉華に体のあちこちを触ら

れるんだと思うとそれだけで心音が加速し

てしまうのだ。


「恵を傷つけることはしませんわ」

「うん、それは信じてる。

 けど、やっぱり恥ずかしいから…」


 言葉尻が小さく震える。

 あたしの胸を両手で揉んでいた莉華が直

に胸にキスしてきて呼吸が乱れる。


「ふふっ、嬉しいですわ。

 じゃあもっと恵に触れされせて下さいな。

 もっと恵の奥まで私に教えて下さい」

「うん…」


 トクン、トクン…

 鼓動が走り出す。

 小走りだったそれが駆け足に変わってい

く。

 私は瞼を閉じた。

 暗闇の中で瞼を下ろすと、肌にかかる莉

華の吐息や指先の感触がよりはっきりと伝

わってくる。

 莉華はどこまでしたいと望むのだろう。

 あたしは莉華にどこまでしてほしいと望

むのだろう。

 そして明日、あたし達はどんな顔でお互

いを見るのだろう。

 好奇心と不安。

 戸惑いと羞恥。

 けれどそれらを全部飲み込んで、今は全

神経を集中させて暗闇の向こうの莉華を感

じていた。





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