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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode



「そんなの、ダメっ、おかしくな…っ!」


 クロードが本当にそれを実行したら、き

っと色んな感情に板挟みにされておかしく

なってしまう。

 頷きたくて、けれど簡単には頷けなくて。

 快楽で揉みくちゃにされた頭で言われる

まま頷いてしまって後悔はしたくない。

 けれど、だからこそ余計に俺の決断を急

かしもせず待ってくれているクロードの愛

情を強く感じている自覚はある。


「あぁ、駆のココ俺の指に夢中で吸いつい

 てきよる。

 なぁ、もう入ってもええ?」

「ん、もうきて」


 大学卒業まであと3年弱。

 いつかクロードの誘いに頷いてしまう日

がくるだろうか?

 どうかその時は俺自身の意思で未来を決

めた結果であるようにと信じたい。

 クロードと共に生きたいと願い、その為

に全てのハードルをクリアしようと決めた

俺自身でありたいと。


「あっ、はぁ…っ!」


 重量感のあるクロードの雄が解された俺

の蕾の入り口を押し拡げてくる。

 俺は懸命に息を吐きながらクロードの雄

を迎え、同時に俺の上に覆いかぶさってく

るクロードに腕を伸ばしてその首に抱きつ

く。

 体内を押し拡げながら進むクロードの雄

の張り出した部分に弱い場所を抉る様に擦

られてビクビクと腰を振るわせ危うくイッ

てしまいそうになるのを耐える。

 俺は強烈な快楽に急かされるようにクロ

ードのパジャマのボタンを外してしまい前

をはだける。

 クロードの体躯は相変わらず同性の俺が

見ても惚れ惚れするほど美しく整ったライ

ンを保っていて、俺はそんなクロードの肌

に口づける。


「イキたかったら無理せんでええで?」

「んぅっ…ヤダ。

 次はクロードと一緒がいい」


 クロードの指先に突っつかれて俺の天を

向くモノは頭を揺らして先端の小さな穴に

ため込んでいた先走りを零すけれど、俺は

首を横に振る。


 クロードと一緒がいい。

 一緒にイって気持ち良くなりたい。

 互いに相手の母国語を覚えて会話がした

いと思えたことを体で実感したいから。 


 クロードはそんな俺の髪をそっと撫でて

嬉しそうに微笑むと、ゆっくりと腰を動か

し始めたのだった。




 吸血鬼の王子が目の前で微笑みながら力

尽きて瞼を閉じる様を見て、少女は涙を零

して絶望する。

 深い森の奥深く、孤独に幽閉されていた

王子の最期を少女はきっと素直に受け入れ

られなかったのだろう。

 10年越しの消えずに残っていた初恋が

そんな形で終わろうとしていることに、そ

して王子を助ける手立てを持たない無力感

に打ちひしがれたのかもしれない。

 そんな少女の隣に、王子の従者でもある

精霊が一人姿を現す。

 “意地を張らずに血を啜ってくれていた

ら”と嘆くその声を聞いて少女は発作的に

自分の体を傷つけて、傷口を王子の口元に

押し当てる。

 本能のまま牙をたてそうになった王子は

少女を突き飛ばして遠ざけ、もう静かに眠

らせてくれと訴える。

 これ以上の飢えと孤独と絶望には耐えら

れないから、と。

 少女はまるで幼子のように嫌だと泣きじ

ゃくり、自分の想いを告げる。

 共に生きたい、と。

 王子は種族の違い、寿命の違いを話して

聞かせる。

 お前が死なない程度の僅かな血で永らえ

たとしても、お前は間違いなく俺を置いて

先に死ぬだろうと。

 飢えよりも気が遠くなるほどの時間より

も、温もりに慣れてしまった後の孤独の方

が辛い、と。

 そんな王子に少女は反論する。

 王子を一人残して死にはしない。

 貴方と共に生きることができるのならば、

私は貴方の子供を沢山生む。

 私が死んだ後も貴方は貴方の子供や孫た

ちと共に楽しく余生を楽しむだろう。

 貴方が私を受け入れて共に生きてくれる

のなら貴方はもう孤独ではない、と。

 王子は少女の提案に驚き、困惑し、けれ

どそれが王子独りきりでは成しえない幸せ

な未来の形ではないのかと気づく。

 そしてそんな未来へ歩み出したいと思い

始めている自分の気持ちにも。

 そうして二人は気持ちを重ね、共に生き

ようという約束の後に体を重ねる。

 そして再び、王子は驚愕した。

 交わる少女の体からは生気が溢れており、

それに触れ吸収した自分の体から飢えが引

いていくのを体感したからだ。

 何故、とベッドの中で先に眠ってしまっ

た少女を抱き締めながら思案する王子の前

に一人の精霊が姿を現す。

 炎を体に纏うその精霊はサラマンディと

名乗り、同時に王子の母であるとも告げた。

 そして精霊は本来実体を持たないエネル

ギー体であること、他者のエネルギーを吸

収し自らの糧とすることが出来る者もいる

という事を教えた。

 吸血鬼と精霊の間に生まれた“忌み子”

である王子は、他者の血と生気の両方を糧

として生きていける体であるということ。

 そしてまた、かつて犯した王子の罪が許

されるだけ時間が経ったということも。

 被害者に近しい者達は病気や事故、老衰

で半数以上はこの世を去り、残った者達も

もう声高に怨恨を主張してはいないと。

 それだけの長い長い…長すぎる時間が経

っていたのだと、王子は知らされたのだっ

た。

 精霊が祝福の詩を歌いながら舞い踊り始

めると昼間でも暗かった森の木々は朽ちた

ものが燃え尽いて光が差し込んだ。

 漂っていた霧は晴れ、草木は青々と葉を

広げて日光を浴び、小鳥達が羽を休めにや

ってくる。

 精霊の祝福により鬱蒼と木々が生い茂る

森は養分の豊かな明るい森へと変わったの

だった。

 精霊は去り際に王子に告げる。

 あなたが犯した罪が許されるだけの時間

が過ぎた時、貴方はただただ静かな死を望

んでいたから朽ちゆくに任せていた。

 けれど王子が考えを変える時がきたら手

を差し伸べるつもりでいた。

 いつ消えてしまうかも分からない精霊と

違い、人間である少女とは共に生きること

ができる。

 その体に流れる血に貴方はずっと苦しめ

られてきたけれど、今からの人生は貴方を

救ってくれるはず。

 どうか幸せに、愛しい子よ。


 …これが北アイルランドに伝わる淫魔誕

生に関する物語の一つである。




             -END-



 

[*前]

あきゅろす。
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