[携帯モード] [URL送信]

悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「見る、なっ…!」

「お、やっぱりー」


 見られたくないのに暴かれた場所がキュ

ッと窄まる。

 それを見て目を細めたお兄さんは、あろ

うことかそこに唇を押し付けた。


「ひッ、やあッ…!」


 指に唾液を絡ませるなんて生易しいと思

うほどの大量の唾液がヒクつく蕾に触れる。

 飛行機の中でクロードの指で解された蕾

は意思に反してすんなりと目の前の男の舌

を受け入れてしまった。

 ぬるぬると動く温かい舌に蕾の表にも裏

にもたっぷりと唾液を擦り込まれて、舌を

咥えさせられた蕾がキュウキュウとその舌

に吸い付くように締め付ける。

 緩く擦られていただけだった前の熱は擦

る手を濡らすほどの先走りを零しながら天

を向いて震えている。

 手にもう少しだけ力を込めて扱かれたら

あと一撫ででイッてしまう。

 生々しい舌の感触に嫌悪感が背筋から離

れないのに、体はそこまで上りつめていた。


「あっさり呑み込むくらい解れてるのに、

 舌が千切れるかと思ったよ。

 フライト中に少なくとも一回はセックス

 してると思ったのに、こんなに感じやす

 い体でクロードに飲ませるだけ飲ませて

 お預けさせてたんだ?

 大人しそうに見えるのに、君ってすご

 いね」


 そんな話は一言だってしていないのに、

赤裸々に見てもいない飛行中の事情を暴か

れて頭が沸騰しそうになる。

 クロードの精を俺が受けると本当に全部

どうでもよくなって立てなくなるまでして

しまうから、クロードの熱は欲しかったけ

ど部屋に着いてからと話し合って決めてい

た。

 だからその場所をこんな風に暴かれて、

クロード以外の者の体液で濡らされること

は立派な凌辱行為だ。


「もう、やめて…。

 これ以上は、もう…」


 心が散り散りになってしまう。

 体はまさに絶頂寸前だけど、心は真冬の

凍てつく湖のように冷え切って氷の刃が心

の柔らかい部分を傷つける。

 俺の体なのに俺の体じゃない。

 けれどやはり俺の体なのだという事実。

 引き裂くことが目的ならこれで十分なは

ずだ。

 これ以上、クロードの留守に押しかけて

俺に何をすれば満足なのか。


「君は大人しそうな顔して本当に男を誘う

 のが上手いね。

 それとも日本人はみんなそうなの?」


 今にも泣き出し気持ちで懇願したのに、

俺の顎をさらう目の前の男には通用しなか

った。

 どうしてと思うくらいに話が通じない。

 これならいっそ言葉など通じていない方

がまだ納得できるのに。

 それともこれは罰なのか。

 どっちつかずでクロードを3年も待たせ

続けた俺への。

 純血の淫魔の体液があればこそクロード

を求めるのかなんて疑問を抱いてしまった

俺に対する手厳しい罰なのか。

 だとしたら謝るから。

 悔い改めるから、もう許してほしい。

 これ以上クロードを裏切りたくない。

 クロード以外の誰かにこんな風に体を触

られるのは、もう耐えられない。


「助けて…クロード…」

「好きでもない男にイかされるのが辛くて

 愛する者の名を呼ぶかい?

 いいよ、いくらでも呼べばいい。

 それでも君の体は俺の愛撫に快楽を感じ

 るし、君の声は廊下にも隣の部屋にも届

 かないけれどね」


 絶対の自信をもって目の前の男が笑う。

 そして俺は、もう全てを毟り取られるま

で待っていることしかできない哀れな獲物

でしかなかった。


 ぐちゅっ


「ひッ、あっ、クロードッ…!」


 舌でたっぷり舐められたばかりの場所に

無遠慮な指が押し入ってくる。

 嫌でたまらなくて必死に首を振るけど、

その指を物理的に抜かせるための手も精神

的に攻撃できる言葉も、俺にはない。


「ふふっ、いいね。

 人間なんてあっという間に快楽に溺れて

 しまうから、嫌だ何だと言っても結局は

 口先だけの奴らなんて腐るほど見てきた

 けど。

 君は本気で俺を嫌がってるのに、本当に

 俺の指や舌に感じてしまうんだ。

 いいよ、ゾクゾクする。

 どんなに侵入が困難で難攻不落と謳われ

 た場所でもいつかは俺の手に堕ちる時み

 たいだ。

 君はクロードの名を呼びながら、どんな

 顔をしてイクのかな?

 心がボロボロになって果てる姿を俺に見

 せてごらんよ」


 歌うような声で目の前の男が残酷な言葉

を吐く。

 けれどその言葉のどれよりも、その指先

を締めつけてしまう蕾で感じる感触こそが

俺の心をズタズタにしていく。


「助けて…っ。

 助けて、クロードッ!!」

「泣き顔もそそるね。

 さて、君はいつまでクロードの名を呼び

 続けていられるかな」


 笑みを浮かべるその唇がまるで見せつけ

るようにゆっくりと股間に近づいていく。

 その唇の向かう先に気持ちとは真逆に張

りつめている熱がある。

 嬲られて唾液によって半ば強制的に蜜を

浮かべるそこに間もなく唇が触れるのだと

嫌というほど思い知らされて喉が締め付け

られるようだった。

 俺をどれだけ貶めれば気が済むのか。

 クロードにだけ許した場所、クロードに

しか触れてほしくない場所に土足で入り込

んできて踏み荒らされる。

 これはもう悪夢だ。

 この罪を贖うためならどんな罰でも受け

るから。

 クロードを失うこと以外なら、どんな事

でもするから。

 だから、クロード…!


 フッ……


 藁にも縋る思いできつく瞼を閉じた瞬間、

瞼の向こうが真っ暗になった。


「何だ…?

 まさか停電?

 いや、非常用電源はどうなっている」


 暗闇の中で今までいいように俺を弄って

いた男の戸惑う声が聞こえる。

 チャンスだ、今しかない。

 足で蹴って、暗闇の中でも逃げて少しで

も距離を取ろうと膝に力を入れたその時だ

った。


 ガチャッ


「っ?!」


 ドアノブの回る音がしたと思ったら、俺

の体内に埋まっていた指がぐちゅっという

卑猥な音を立てて出ていく。

 俺はそれに一瞬息を詰めて、ようやく解

放された安堵に体から力を抜いた。


「ぐはッ!!」


 間もなく速足でこちらに歩み寄ってくる

気配があり、バキッという重い音と共に目

の前にいた男の気配が離れた。

 そしてその直後にパッと部屋の明かりが

つく。

 真っ暗な場所から一気に明るい場所に戻

されてすぐには視界が戻らない。

 瞬きをしている俺の目の前、絨毯の上で

誰かが拳を振り上げていた。


「ゴフッ」


 重い音を立てて誰かが立て続けに、そし

て一方的に暴力をふるっている。

 ようやく目が慣れてきて、誰だろうと懸

命に瞬きを繰り返す。





[*前][次#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!