悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*
兄の体が、邪魔だ。
幼いながら、純粋にそう思った。
両手で押して重い体を寝返りをうたせる
ように向こう側へやった。
その胸には銀のナイフが刺さっていて、
それが死因だろうことは容易に想像がつい
た。
兄の体をどけると、その血で濡れながら
フェロメニアの体には目に見える外傷がな
かった。
その顔の前で手を振ったら瞬きをしない
か…そう思えるような表情で息絶えている
のは、最後の瞬間まで快楽に染まっていた
からなのか…。
直接触れたい…そう思ったけれど指が動
かなかった。
“誰も触れないで”
物言わぬはずの死体が、その表情で訴え
ていた。
香りと静寂だけが、その体に触れること
を許されていた。
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