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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「心配なら僕が添い寝しようか?

 僕が隣に居たら、あの2人だって変なこ

 と出来ないだろうし。

 部屋割りは決めても、その部屋で絶対に

 寝なきゃダメとは言われてないし、ね?」


 膝頭に頬をのせこちらを上目遣いで見て

くる麗は悪戯っぽく笑ってシートの上に置

いている俺の手に手を重ねて指を絡めてく

る。

 確かに添い寝だけだと言い含めれば麗が

手を出してくるようなことはないだろうけ

れども…。


「…やめとく。

 兄貴とクロードにバレたら絶対に揉める

 から」


 麗がいいなら自分も、とあの二人なら絶

対に言う。

 そして変に洞察力の鋭いあの二人の目を

かいくぐれる自信が俺にはないのだ。


「えー…。

 いい案だと思ったんだけどなぁ」


 麗は気落ちしたような顔でこちらを見上

げてくるけど、こればかりは了承できない。

 燻っている火種に油を注ぐような真似は

自分の首を絞めるだけだ。

 しかし麗はまだ何か言いたそうに俺に視

線を向けたままで、俺もビーチバレーの観

戦に集中できない。

 …いや、別にどっちが勝っても最悪の場

合は野宿と決めているんだけど。


「お兄ちゃん」

「うん?」


 目の前で繰り広げられるゲームはすっか

り白熱していて、もう二人共ビーチバレー

に夢中になって部屋割りの事なんて忘れて

くれればいいのに…なんて非現実的なこと

を考える。

 それを麗の声が現実へと引き戻した。


「添い寝はお兄ちゃんの気が向いたらでい

 いけど、その代わり誰にも捕まらないで

 ね?」

「俺だって好き好んで寝込みを襲われるつ

 もりはないって」


 指を絡めるようにして握っていた麗が、

その手にキュッと力を込めるのがわかる。

 麗が心配しなくても最初からそのつもり

だと苦笑いを浮かべたものの、一筋縄では

いかない相手なのだから油断はできないと

気を引き締める。

 そんな俺をじっと見つめていた麗は、顔

を上げて俺の肩に頬擦りしてきた。


「うん?どうした…?」

「お兄ちゃん、どうしても添い寝しちゃダ

 メ?」

「だから、それは…」


 いつもなら俺がダメだと言えば麗は引き

下がるのに、どうやら今日はまだ諦めきれ

ないらしい。

 なんと言えば麗が諦めるのか言葉を探す

間に麗は頬だけでなく額まで俺の肩に擦り

つけ、そして顔を埋めたまま深く深呼吸し

た。


「心配だなぁ、僕。

 こんなに甘い匂いさせてるのに、お兄ち

 ゃんはどうしても1人で寝るの?」


 ギク…ッ。

 家の中ならともかく外で麗がこんなにベ

タベタするなんて珍しい…なんて思ってい

たら麗が思いもかけず鋭いところを突いて

きた。

 いくら本業ではないとはいえ、ファンが

いてくれる以上はそれなりの活動やファン

サービスがあるわけで、それと学業を両立

させるとなれば自然とそれ以外の時間は削

られる。

 たとえばそれはクロードの悪戯だったり、

兄貴の意地悪だったり、麗がいつも以上に

甘えてくる時間だったりする。

 俺だって妙な体質であるとはいえ健全な

男子高校生なわけで、だとすれば抜く暇が

なければ溜まってしまうのは自然の摂理と

いうか…。

 断じて誰でもいいからと盛っている訳で

はないのだが。


「あ…汗かいたし、先に戻ってシャワーで

 も浴びてこようかな」


 自分の鼻ではわからないからなんとも言

えないのだけど、もしフェロメニアという

のが汗に何らかの特殊な物質が混ざり込ん

でいるから香るのだとすれば、シャワーで

洗い流してしまえばマシになるんじゃない

だろうかということも可能性としてあり得

るのだ。





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