悪魔も喘ぐ夜 Character Episode * 5月の大型連休を終え、街が日常の休日 を迎えている頃。 一台の黒いリムジンが人気のない高校の 前の道路に滑り込むように停車した。 「(到着しました。 こちらです、クロード様)」 英語を聞きなれていない日本人が聞いた なら英語に聞こえるだろう。 しかし英語が堪能な者が聞いたなら、英 語ではない異国語に聞こえる言語で口数の 少ない青年は主である隣に座っている茶髪 の青年に語りかける。 「ふーん?」 明るいブラウンの髪は短髪だが、前髪が 顔半分を隠すほど長い。 その前髪の間からグレーの目が覗き、ス モークがかかったリムジンの窓をボタン一 つで下げて退屈そうに溜息をついた。 「しょっぼいなぁー。 こんな学校よう通えるわー。 東の小国まで逃げてきて、それでこない な生活やなんて…俺なら願い下げやわ」 髪や目、肌の色だけでなく顔の彫りも英 国ならではの深さでおよそ日本人には見え ない。 しかし、その口から発されたのは言葉遣 いやイントネーションからしてどこの地方 ともとれないが、明らかに日本語だ。 [*前][次#] |