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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 と、そこで大倉先輩が寄ってきて、リク

エストリストなるものを手渡される。

 B×Bの公式ファンクラブに入るとB×

Bのメンバーに“絡み”をリクエストでき

るというシステムらしいのだけど、そこで

もらったリクエストの人気上位一覧だ。

 これは公式ファンクラブの会長が他でも

ない大倉先輩だからできること、らしいの

だけど…。

 やっぱりこういうところがつくづく普通

のアイドルとは違うんだろうなぁと思うし、

そんなものは見せ物にするべきじゃないだ

ろうという反発もある。

 これだけの人を動かしていて、それだけ

のお金も動いていて、そんな個人的な意見

なんてもう今更なんだけども。


「麗君とのカットはさっきいただきました。

 それはそれでいいのですけど、あとは人

 気投票1位と2位だった秀君とクロード

 君との絡みですわね。

 休憩の後はさっきの続きからじゃなくて

 水着に着替えてビーチバレーをしてもら

 いますわ

 そこで」


 ペラペラと喋りつづける大倉先輩の前で

両手を顔の前に出してストップを無言で訴

えると大倉先輩がようやく気付いて言葉を

止める。


「いつも言ってますけど、俺は何もしませ

 んから。

 リクエストでそういうことするの、なん

 か違う気がするし。

 撮るのは勝手ですけど、俺が自分から何

 かするつもりはないんで」


 どれほどの人が動いてようと、どれほど

のお金が知らぬ間に動いていようと、それ

だけは譲れない。

 歌と踊り、それ以外の…たとえば絡みに

対する要求には従えない。

 唯一のグレーゾーンはジャケットなんか

の写真撮影だけど、それもあまり過激な要

求は受け入れられない。

 それが俺がB×Bを続ける上で、最低限

守ろうと思っているラインだ。

 それが破られるなら俺はこのグループを

抜けるつもりだし、それを我儘だと詰られ

たとしても構わないと思う。


「駆君はいつまで経っても堅いですわねぇ。

 今だけの若さを楽しめばいいですのに」

「若さって言われても…」


 大倉先輩が溜息をついているけど、なん

だか違う気がするのは俺だけだろうか。

 たとえば10年とか20年経って懐かし

く思い出せる過去ならいい。

 でもB×Bは間違いなく黒歴史だ。

 しかも現在進行形で。


 じゃあなんでそんなものを続けているの

かというと…こういう言い方をすると身も

蓋もないのだけど、普通にバイトをするよ

りも給料がいいからだ。

 大学を控えた3兄弟のいる家庭の経済事

情を考えれば、使えるお金はあるに越した

事はないわけで…そういう意味ではこれか

ら一番お金がかかるだろう進路を進む兄貴

にとってもいいバイトなんだと思う。


 最初こそ新聞部の出し物として大倉先輩

の部長命令があったけど、学園祭のライブ

が終わってからDVDの販売までそれほど

間がなかった。

 そこからあれよと言う間に次のライブの

日時が決まったり、毎週金曜の深夜にネッ

トでコミュニティ限定で生放送がバトン形

式で開始されたり。

 いつの間にかネット放送の方で宣伝がつ

き、ライブが微々たるものだけど黒字にな

ったあたりから大倉先輩のご両親の経営し

ている会社がスポンサーがついてくれて、

活動費という名のバイト料が発生するよう

になった。

 ネットでもリアルでも素人グループとは

思えないほど勢いのついたB×Bの人気は

右肩上がりで、有り難いやら申し訳ないや

ら…とか思っている間に気楽にはやめられ

なくなっていた。

 今思えば、受験でカリカリしている2〜

3年生をターゲットに単調な学生生活の刺

激になったのかもしれないし、大倉先輩あ

たりがその辺りを上手く演出したんだろう

と思う。

 そうこうしている間に季節は移り変わり、

クリスマスライブを経て卒業式の後、その

まま体育館を貸し切って卒業式ライブを決

行した。

 元生徒会長だった兄貴は教師の受けもよ

く卒業式ライブは特別な制約もなく了承さ

れ、何台ものカメラでライブがネットで生

放送される中でB×Bの卒業ライブは始ま

った。

 兄貴はもちろん、全指揮をとっている大

倉先輩やそのサポートをしている片岡先輩

がこれで卒業ということもあり、ライブの

観客と生放送の視聴者ならびにコメント数

がスポンサー会社の設定した厳しい目標値

を達成できなければB×Bはこの卒業ライ

ブをもって解散になる…はずだった。





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