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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 からかわれるだろうかと身構えていたの

けど、兄貴は何も言わずに俺を解放した。

 調子が狂ってしまって、恥ずかしいなが

らも一瞬だけ視線を上げるとその口元には

含みのある笑みが浮かんでいた。


「分かりました。

 じゃあ隅々まで綺麗に洗ってきてくださ

 い」


 …なんか企んでる?

 しかしそれを面と向かって尋ねてみるわ

けにもいかず、一抹の不安とドキドキ感を

抱えながらシャワールームへと促す兄貴に

従った。




「……」


 俺がシャワーから上がると交代で兄貴が

浴室に消えた。

 まだ濡れた髪のまま兄貴のベッドに寝転

がって時間を潰す。

 兄貴が大学へ進学して一人暮らしを始め

て何度もこの部屋には来たけど、いつも勉

強が優先だからエッチした日数はそんなに

多くはないと思う。

 でもその気になった時は俺の腰が立たな

くなるか、それに近いくらいガッツリ濃い

一日になるから、多少の欲求不満は許容範

囲内だ。

 色々あって喧嘩もしたけど、今日はクリ

スマスだし、ちょっと位は期待していい…

よな?

 もちろん、体だけじゃなくて心も満たさ

れるようなのを。


「……」


 いや、相手はあの兄貴だし。

 あんまり期待すると後で凹むことになる

んじゃ…。


「百面相して楽しいですか?」


 悶々としながらベッドの上でゴロゴロし

ていたら、戻ってきた兄貴に呆れたような

目で見下ろされた。

 べつに好きでそんな顔をしていたわけじ

ゃないのに。


「そんなんじゃないし…」


 口を尖らせながら否定して起き上がると、

空いたスペースに兄貴が入り込んできた。


「ここへ」

「えー…?」


 膝の上をポンポンと叩かれて本気かと兄

貴を見るけど、兄貴はニッコリ微笑んだま

まだ。

 膝の上なんて子供じゃあるまいしと思う

けど、そのままでは埒があかないので渋々

そちらに移動した。

 向かい合わせで兄貴の膝に腰を落とすと

その分だけ俺の視線の位置が高くなる。

 それはそれでちょっと新鮮だけど、それ

はつまり身長差のぶん兄貴の方が脚が長い

ということでもあるからちょっと悔しい。


「今夜はやけに素直ですね」

「だって…」


 早く兄貴が欲しいし。


「兄貴は明日だってバイト入ってるんだ

 ろ?」


 家庭教師のバイトが入ってるってことは

兄貴だって無理は出来ないし、俺だってそ

れを承知で欲しがったりは出来ない。

 …出来ることなら明け方までずっと兄貴

と繋がっていたいけれども。


「明日はフリーですよ。

 そんな物欲しそうな顔をして、1回や2

 回くらいでは満足できないでしょう?」


 ズバリ言い当てられて額の上まで熱が一

気に駆け上がってくる。

 とっさに否定も肯定も言葉が出てこない。

 そんな俺の尻をパジャマ越しに撫でた兄

貴はパジャマの裾から掌を滑り込ませてき

て背中を撫でた。


「だって、もうすぐセンター試験なのに?」


 何か言い返さなきゃと思ってようやく出

てきたのはそんな言葉だった

 世間一般ではクリスマスで華やいでいて

も、センター試験を受ける受験生にとって

はもう最後の追い込みだ。

 もちろんクリスマスを楽しんでいる受験

生もいるだろうけど、家庭教師をつけるよ

うな家の全てがクリスマスは来なくていい

ですなんて言うとは思えない。

 街で出会ったあの人みたいに、勉強外で

だって兄貴と過ごしたい生徒はいるわけだ

から。

 それなのに明日1日フリーだなんて、そ

んな都合のいい話があるんだろうか。





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あきゅろす。
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