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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「じゃあ今日の放課後にお邪魔してもいい?

 図々しいかもしれないけど、私からもお

 願いさせてほしい」

「あー、うん。構わねーけど」


 さすがに丸投げしてくるかもしれないと

は思わなかったが、少なくともちゃんとウ

チで引き取ることが決まるまでは最後まで

ちゃんと責任をとろうとする秋月の姿勢が

垣間見えた。

 実のところ、昨日の母さんは子猫にミル

クを飲ませてあやしながらご機嫌そのもの

だった。

 あとは以前飼っていた愛猫ちゃこを亡く

した時に実は人一倍落ち込んでいた父さん

が頷けばウチで引き取ることに大きな障害

は何もないと思う。

 今夜にでもタイミングを見計らって父さ

んの膝にのせてみよう。

 チャコも父さんの膝の上で寛ぐのが大好

きな猫だったから、きっと父さんも嫌な顔

はしないだろう。


「あー、それから“白浜さん”っていうの

 ナシ。

 なんか背中が痒くなるから」


 同級生に苗字をさん付けで呼ばれるのは

あまり好きじゃない。

 仲良くしたいと思うような相手ならば特

に。


「じゃあなんて呼べばいい?」


 秋月が小首を傾げてこちらに視線を向け

てくる。

 顔立ちの整った美人な秋月がそんな顔を

していたらクラスの男子がどよめきそうだ。

 ガサツで男勝りなオレからすると一生真

似できないような仕草ではあったが、別に

不快ではなない。


「別に何でもいい。

 白浜でも、アキラでも」

「じゃあ、アキラ」


 すんなりとそれが秋月の口から出て、今

度はこちらが驚いた。

 男友達ならともかく、女友達から名前を

呼び捨てにされるのはずいぶんと久しぶり

だ。

 けれどまるでそっちのほうがしっくりく

るようで、秋月はニッコリ微笑んでいる。


「私のことは沙耶でいいよ、アキラ」


「あ、うん…」


 秋月の笑顔が眩しい。

 仲良くなれるかもしれないとは思った。

 猫のことをちゃんと考えられる秋月は、

オレと会話していても苦痛ではないようだ

ったから。

 花の女子高生が“オレ”なんてガサツな

言葉遣いしていれば、仲良くなろうなんて

考える人間の方が少ないだろう。

 けれど、秋月はそこに一歩踏み込んでき

た。

 躊躇う間などなく。

 …考え過ぎだろうか、呼び方一つで。


「あ、もう昼休み終わっちゃう。

 アキラ、行こう?」


 校内に予冷が鳴り響く。

 次の授業は教室移動があったことを思い

出して二人で慌てて駆け出す。

 柔らかい毛に擽られるような、そんな気

持ちを抱えながら。






               fin







[*前]

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