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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 そろそろここから出ても大丈夫だろう

か?

 広そうな洋館だとは思うが、あの人数で

探すのだ。

 万が一全ての部屋を隅々まで調べられて

ここが発見させるようなことになったら、

今のままでは逃げ場がない。

 ここから出て次の出口を探す必要があっ

た。

 床を持ち上げようと手探りで天井に触れ

たら、その手首を掴まれた。


「えっ…?」


 誰かの気配など、なかった。

 虚を突かれている間に手首を階段に縫い

付けらるように押し付けられて仰向けにさ

れる。

 深い闇の中で赤い目だけが光る。


「誰っ?!んぐっ…!」


 こちらは相手の姿も確認できないほどの

闇だというのに、相手は的確に唇を浚って

きた。

 抗うと歯を立てられ、強張ったままの舌

を荒々しい舌に絡め取られる。

 顔を背けたくても後頭部を階段の角に押

し付けられたままの今の状況では無理な相

談だ。

 出来るだけ体力を消耗せずに次の一手に

出られるようにしたほうがいいと口内を舐

め回す舌には好き勝手を許した。

 地下は年中平均して気温が低いのか、キ

スをしている間もじわじわと冷えが足元か

らせり上がってきた。

 しかし悲しいかな、そうして蹂躙をさせ

ている間に気づいてしまった。

 この舌使いとこのクセは…。


「クロ…ドっ」

「もう諦めたほうがええよ?

 この邸を知り尽くしてる俺の手ぇからは

 逃れられんさかい。

 ニンゲンの目にはこの暗闇の中も見えて

 へんのやろ?」

「うッ!や、やめっ…!」


 赤い目が笑う。

 暗闇の中で迷うこともなく股間を鷲掴み

にされて腰が跳ねた。

 愛撫と呼ぶには手つきが荒すぎて、気持

ちいいかとかいう次元ではなかった。


「さぁ、どこから食べたろうか。

 舌?耳?

 ココは残しておいた方が最後まで楽しめ

 そうやんなぁ?」


 キュッと股間を握っている手に一瞬だけ

力が籠って容赦のない悪寒が背筋を往復す

る。

 股間を握りつぶされるんじゃないかとい

う恐怖に怯えながら舌や耳を齧られるなん

て悪夢の中でも最悪のランクなんじゃない

だろうか。


「やっ、やめっ…!」


 震える声に涙が混じる。

 よく知ってる顔で、声で、でもやはり皮

の下は化け物でしかないらしい。

 ジリジリと体をくねらせて逃げたかった

けれども、股間を掴まれたままでは結果な

ど知れていた。


「逃げてもええよ?

 逃げて逃げて逃げて…そうやって少しず

 つ俺に齧られていきたいんやったらな?」


 何よりも深い闇の中で、とにかく祈った。

 目の前の恐怖に足を竦ませながら、胸の

内で何度も十字を切った。

 どうか神さま、この化け物から救ってく

ださい、と。





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