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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「暇潰しとか言ってたくせに結構マジじゃ

 ん…」


 怒涛の同時押しの嵐で締めたその曲は、

もう人間業では不可能と思える譜面だった

のにコンボボービスを合わせて高得点を叩

き出していた。

 俺がこっそり心の中で感嘆の声を漏らし

たのは小学生の集団から発せられた「オォ

ーッ!」という歓声とほぼ同時だった。

 ゲームを終えて袖口を戻した西門が鞄を

持って帰ろうとしたのかこちらを振り返

る。

 と。


「ゲッ…」


 露骨に顔をひきつらせてくれた。

 そんなに嫌がらなくてもいいと思うんだ

けど。


「よ。

 暇潰しとか謙遜しなくてよかったのに」

「チッ…見てんじゃねーよ…」


 鞄を掴んだ手を気だるそうに肩にのせ、

もう片方の手をズボンのポケットに突っ込

んで西門はこっちに歩いてくる。

 ブツブツと不満げに漏らされる言葉は不

機嫌丸出しだ。


「なんでー?

 アーケードなんだからいいじゃん」


 あれだけのプレイを見せつけておいて何

をそんなに怒っているのか分からない。

 しかし西門は脇を通り抜けざまに手を伸

ばしてきて俺の横顔にベシッと一発くれた。


「なぁ、俺何かした?」

「さぁ…?」


 訳が分からなくて後ろの二人に問いかけ

てみたけれど、わからないと首を横に振ら

れた。

 二人が分らないならやっぱり納得いかな

い。

 よし、追いかけよう。


「おい、西門ってば!

 ちょっと待てよ!」


 足早に出ていく西門をゲームセンターの

入り口で掴まえる。


「うっさい。ウザイ。カエレ」

「なんで怒ってんのかそれじゃ分かんない

 だろ」


 まるでシャッターを下ろすような対応に

説明を求めてみたが、西門は一瞥くれただ

けで答えない。


「褒めてるのに…」

「ハァ!?どこが!」

「褒めてるじゃん、暇つぶしなんて謙遜だ

 って」

「パーフェクトでもねーのに嫌味かよ…」


 褒めているのに西門はズボンに手を突っ

込んだままブツブツ言っているが、どうも

意味を取り違えているらしい。


「えっ?

 どこが嫌味だよ?

 あんなのパーフェクトだったら人間じゃ

 ないだろ」

「さすがにそれは言いすぎだろ…」


 “コイツ頭大丈夫か?”という目で見ら

れているような気がする。

 褒めたのに心外なんだけど。





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あきゅろす。
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