悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*
中学２年生。
担任は若い女性教師だった。
ある日の授業の終わりに、その教師に声
をかけられた。
“桐生君は優秀だから、みんなには秘密
で特別に放課後勉強を教えてあげる”
特に疑問には思わなかった。
そういうこともあるのか、と少し不思議
に思ったくらいで。
放課後１時間程、教室で勉強をした。
内容はよく覚えていない。
授業でやったことの復習と補足、みたい
な内容だったかもしれない。
でも自分一人だけ、という優越感は確か
にあったし、これでまた明日からの授業に
備えられると気持ちは軽かった。
帰ろうとしたら、呼び止められた。
“もう日が暮れるから車で送ってあげ
る”、と。
それがもし知らない他人に言われていた
ら間違いなく断っただろう。
しかし誘っているのは担任教師。
家庭訪問にも来ていて、両親も知ってい
る。
だから、頷いた。
早く帰って弟たちとも遊びたかったか
ら。
しかし車に乗ってみると、車は家とは違
う方向へ走り出した。
家への道を忘れたのかと尋ねたら、もう
一つ秘密の授業をしてあげると言う。
その横顔は夕日に照らされて不気味に見
えた。
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