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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「ほなら一緒に行こか。

 車まわすわ」

「……」


 なんでそうなるんだろう。

 いや、確かに家は近いけどさ。


「樹も一緒に乗ってく?

 どうせ待ち合わせ場所一緒だし」


 少なくとも樹がいる間は手を出してこな

いだろうと思って誘ってみたけど、樹はゆ

るく首を横に振った。


「いや、いいよ。方向逆だから」


 俺の身の安全の為にも同乗して欲しかっ

たんだけど遠慮されてしまった。

 まぁ俺の車じゃないんだけど…。


「じゃあ俺も電車で帰ろ」

「なんでそこで“じゃあ”やねん。

 どうせ方向一緒やろ。

 あと5分で到着するし、さっさと片付け

 よか」


 むしろなんで俺の意志は無視なんだと問

いただしたい気分だ。

 端から見れば友達の親切を断る不届き者

かもしれないが、それでもいいから俺は身

の安全を確保したい。

 手の早いクロードと狭い車内に5分でも

一緒にされるのは危険だ。

 しかし節約やらエコやらもっともらしい

理由を押し付けてくるクロードは引く気配

もない。

 というか、こういう時だけ節約だのエコ

だの言い出すのはどういうことなのか。

 いつもの生活態度を一度キッチリ振り返

ってほしい。


「ほら、もうグズグズ言わんと玄関行き。

 車来るやろ」

「わっ、引っ張るなっ!

 誠一郎、樹、後でな!」


 あくまでも自分のペースを崩さず俺の手

首を掴みズンズンと進むクロードに引っ張

られてよろけそうになりながらも二人に手

を振る。

 見送る形になった二人はもうすでにいつ

ものことと慣れたように見送ってくれた。


 去年の夏祭りは散々だった。

 だから今年の夏祭りは去年の分まで目一

杯楽しもう。

 来年もその先も、ずっと楽しかったと思

い出せるように。




              END





[*前]

あきゅろす。
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